【薬学部】病院薬剤師と協働で作成した論文が日本病院薬剤師会雑誌に掲載!
実務実習でお世話になっている福山記念病院の薬剤師(西塚医療技術部長・薬剤科長および小土井先生)と本学部教員(道原教授)および学生(5年生の岸本君と田原君)とが協働で作成した論文が、『日本病院薬剤師会雑誌』に掲載されることになりました。
皆さんこんにちは。論文作成に携わった方々から嬉しいメッセージが届きました。薬学部薬学科 の道原教授(社会連携センター兼任)からの報告を、薬学部学長室ブログメンバーのY.Sがお伝えします。
西塚先生から一言
はじめまして!福山記念病院薬剤科に勤務しております西塚亨と申します。この度、薬学部「病態生理・ゲノム機能学研究室」の学生さん2名(5年生の岸本大樹さんと田原佑馬さん)と一緒に、道原教授のご指導のもと、「病棟薬剤師とセラピスト間の連携強化に向けた取り組みと処方適正化の検討」に関する論文作成に取り組みました。
私自身、福山大学薬学部(臨床薬学研究室)を卒業してから24年の月日が経ちました。在学中には、中村明弘先生(現在は昭和大学薬学部長)のご指導いただいたことなどが、今となっては懐かしく思われます。当時を思い出しながら論文作成に挑みました。
福山大学薬学部では卒後研修の一環として、大学教員にご指導いただく機会が設けられています。今回、初めて『日本病院薬剤師会雑誌』へ投稿するにあたり、研究デザインや統計解析など分からないことが多々ある中で、道原教授には論文作成のノウハウから査読者からの質問に対する回答時のアドバイスまで、多くのご指導をいただきました。お互いに多忙な業務環境の中、早朝4時から意見交換をメールで行ったこともありました。また、岸本さんや田原さんにも論文内容をチェックしてもらい、図表作成などにもアドバイスしていただきました。
昨年の12月に竣工した「未来創造館」の5階Tルームで、道原教授、岸本さん、田原さんを交えて4人で討議(4時間)したことは、私自身にとっても良い経験でした。本当にありがとうございました!
本題とは逸れますが、未来創造館の近未来的な構造がとてもきれいで、ビックリしました!一方、在学中に慣れ親しんだ旧薬学部棟の取り壊しの状況は少々ショックでした。次の写真は、新棟の壮観とともに、次第に姿を消していった旧校舎へのノスタルジーを込めて載せておきます。
今回の取り組みを通じて私自身、素晴らしいと感じたことは教授からの指導だけでなく、学生さんも一緒になって論文作成に真摯に取り組んでいただけたことです。薬学部が6年制となり10年以上が経過していますが、その成果は着実に実を結んでいることを実感することができました。
皆様のご指導により、3回の差し戻しがあった後、8月3日に論文採択の通知をいただくことができました。
現在、日本は超高齢社会の中で医療提供体制が見直されています。患者中心のシームレス(継ぎ目がない)な医療を実現するために、病院機能の分化・強化が進められる中で、医療の現場では薬剤師もそれぞれの病床機能(高度急性期・急性期・回復期・慢性期)に合わせた役割を担うことが求められます。私が勤務している病院は、地域医療において回復期機能を担っている病院です。回復期での薬剤師の役割は、まだまだエビデンス(根拠・証拠)が整っていないのが現状です。
今回の取り組みにおいて、回復期リハビリテーション病棟でのリハビリセラピストとの連携強化は薬剤師の処方介入に有効であり、処方の適正化にも効果的であることが示唆されました。私の論文が回復期での薬剤師の活動に少しでもお役に立てればと願っています。
今回のように病院と大学が協働で論文作成に取り組むことにより、実際の臨床現場で問題になっている事柄や取り組んでいる内容などを大学側に情報提供することもできたのではないかと考えています。実際の医療現場と大学が連携することで、地域医療の充実にもいっそう寄与できると思います。これからもWin&Winの関係を構築していきたいですね!
道原教授から一言
当初、私と西塚先生は、学生が実務実習を行う上での担当教員と病院実習指導薬剤師の間柄でしかありませんでした。何度目かの病院訪問を経て、西塚先生が私の1つ下の後輩、私が所属していた研究室の隣の研究室に所属、私の後輩(五郎丸准教授)と知り合い、西塚先生の恩師と私が懇意にさせていただいていたことなどが分かり、信頼関係が芽生えていきました。そんな時、卒後研修関連の話し合いの中、今回の研究に関するプロジェクトについて相談されました。
不思議な縁はさらに続きます。今回の論文の共著者となる薬剤部の小土井先生も福山大学薬学部の出身であり、すでに退職された松井教授の研究室所属であったことを以前から知っていました。現在、私が主宰する研究室は、松井教授の後を引き継いだ研究室になります。当時、松井教授の研究室所属だった松岡准教授(その頃は助教)と共に、現在は研究室の運営を行っています。実をいうと、松岡准教授の推薦を受け、研究室の助手に来てくれないかと小土井先生に打診した過去もあり、西塚先生から共同研究の誘いをもらった時、運命的なものを感じておりました。先輩(道原)と後輩(西塚)、教員(松岡)と学生(小土井)、大学と病院の連携など、すべてが強く繋がっていることを感じました。これらの繋がりを大切にしていきたいと考え、西塚先生の研究プロジェクトに、研究室の5年生(岸本君・田原君)にも参加してもらうことにしました。病院関係の論文作成の手順を学部生の時から修得してほしいということも参加させたい理由の1つでした。
今回、本学部の卒業生であり、私の後輩であり、学生の指導薬剤師にもなって下さった西塚先生と、学生共々、協働で論文を作成できたことは、大学が進める社会貢献の一翼を担えたのではないかと考えています。また、学生たちは、西塚先生から医療の進歩と社会のニーズに対応するための自己研鑽と教育能力(特に、卒業生【先輩】が学生【後輩】を指導する能力・意義)について学べたのではないかと思います。今後もこのような連携が継続できるよう、西塚先生とは定期的に検討会を開いていきたいと考えています。
小土井先生から一言
福山記念病院に勤務しております小土井です。この度、当院の取り組みが論文となり、『日本病院薬剤師会雑誌』へ掲載されることを大変嬉しく思います。福山大学に在学中は、現在は退職されておられます松井教授の研究室に所属していました。道原教授の言葉にもありますように、研究室には松岡准教授も所属されており、松井教授や松岡准教授から指導をいただいていました。卒業して9年になりますが、研究室での日々は今も鮮明に覚えており、何物にも代えられない思い出となっています。
病棟薬剤師には、多職種協働を行い、患者さん個人に合わせたよりよい薬物療法となるよう処方提案、処方介入を行うことが求められています。例えば、今回の投稿論文にも記載しているように、リハビリセラピスト(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士等)との連携では比較的身体に負荷のかかった状態におけるバイタルサイン等の変化を確認することができます。リハビリセラピストとの連携は、看護師との連携とは異なる視点で患者さんの状態を確認することができ、より広い視野で薬剤の効果の判定を行うことが可能となります。連携する職種を増やすことは、隠れていた問題点を見つけやすくし、薬学的介入がより深くなり、処方の適正化に貢献できます。これにより、患者さんのQOL(Quality of Life、人生・生活の質)の向上につながっていると私は考えています。道原教授の言葉にもありますように、今回の論文作成には不思議なご縁のつながりにより、雑誌への掲載に結びつきました。今回のご縁を今後も大切するとともに、後輩にもこのご縁がつながっていくことを願っております。
岸本君から一言
今回、西塚先生の論文作成に関わる機会をいただき、回復期病棟における薬剤師の役割、求められているニーズ、また、今後積極的に参画していくべき分野について考えました。自身の進路を考える上でも、良い機会を与えられたと感じています。現在、福山記念病院で実務実習を行わせてもらっています。コロナ禍の現状、難しいこともありますが、今回の論文を作成する過程で学んだことを活かしていきたいと考えています。
田原君から一言
今回、西塚先生の論文作成に関わらせていただき、論文の書き方・進め方だけではなく、臨床現場での薬剤師の取り組みを知りました。現在、コロナ禍で実務実習が例年通りにできない状況です。そんな中、臨床現場での取り組みを1つでも多く知ることができたこと、そして薬剤師として自分が何をしていき、何ができるのかを考える、とても価値のある経験となりました。卒業後も自己研鑽できるよう頑張っていきたいと思います。
最後に!
薬学部40年の歴史を礎に新たなる価値の創造を目指し、在学生と卒業生並びに地域社会と連携しながら、これからも一歩一歩着実に進んでいきましょう!福山大学薬学部、永遠なれ!
卒業生・在学生のパッション、熱い思いよ、君に届け! by 薬友会(薬学部同窓会)会長 道原明宏
学長から一言:卒業生によって病院薬剤師会の専門誌に投稿された論文の作成に当たって、本学の教員と学生が協力し、査読の難関を見事に突破して掲載が決まったという喜ばしいニュースに対して、心から祝福したいと思います。同窓の絆をいつまでも大事にして、機会あるごとに互いに協力し支援しあってこそ、薬友会の連帯と団結がますます強固なものになるのでしょう。学生の実務実習ではこれからも福山記念病院のお世話になることが多いと思います。そうした際、西塚・小土井の両氏にはとくに、後輩の成長のためにお力をお貸し下さいますよう、お願いいたします。