グローバル社会における人のあり方 ―AMDAの活動と国際貢献を通して―
2018年度第2回の教養講座は、AMDAの代表・理事長である菅波茂先生によるお話でした。「グローバル社会における人のあり方 ―AMDAの活動と国際貢献を通して― 」と題する講演に学生は耳を傾けました。ちなみに、菅波先生は福山出身なので一般市民の方も参加して下さいました。
7月27日(金)に行われたこの教養講座について、大学教育センターの学長室ブログメンバーである竹盛が報告します。
まず、菅波先生の略歴を紹介します。
菅波先生は、1946年、広島県福山市(現在の神辺町)のお生まれです。1972年に岡山大学医学部卒業後、77年に同大学院を修了されました。在学中から国際的活動を始められ、81年に菅波内科医院を開業後まもなく、84年にAMDA(Association of Medical Doctors of Asia:アジア医師連絡協議会)を設立され、開かれた相互扶助をモットーに国際的緊急人道支援活動を展開しておられます。その活動は国連の認めるところとなり、2006年には国連経済社会理事会から日本のNPO法人としては初の「総合協議資格」を得ておられます。今日までのAMDAの活動に対し、国連ガリ事務総長賞、ガンジー賞、沖縄平和賞などなど、20余の菅波先生個人及び団体は、数多くの受賞・表彰を受けておられます。
また、菅波先生は医学生時代に東南アジアから中東までバックパッカー、8か月間各国を巡られました。その旅は、後のAMDAの国際的人道支援活動の原点となったものです。これまでの様々な受賞とはやや趣を異にしますが、この旅に目を向ける「文化の質的向上への貢献を顕彰する旅の文化賞」を今年は受賞しておられます。
現在は、AMDAグループ代表及び認定非営利活動法人AMDA理事長を務められ、岡山に続く活動の新拠点となるマレーシアの首都クアラルンプールに在住しておられ、多角的な国際活動に傾倒しておられます。
さて、次に菅波先生が講演で何を訴えられたのか、その要点をまとめてみます。
AMDAの人道支援活動の基本として、開かれた相互扶助という理念がある。
集団としての価値判断、すなわち文化は、それぞれの国によって異なる。決して同じではない。
多くの国で英語を使うから、考え方が同じということはない。漢字を使うからといって、中国と日本では、考え方が同じというわけでもない。それぞれの文化は違う。
その文化のその違いを理解することなく、お互いは考え方が同じだと勘違いすると、人を信用することができず、嫌いになることがある。
大切なのは信用と信頼である。この世界で災害や難民問題が起きる度に、AMDAはこの信頼を大切にして活動してきた。あの人だから力になってくれる、そういう人と共に、歓びと幸せのために活動してきた。そのために、人間関係をどうやって作るのか。
そもそも、人間関係には3つある。フレンドシップ、スポンサーシップ、パートナーシップの3つである。利害をともにしないオアシスのような関係、一方的に様々なことをしてあげる関係、そして苦労をともにする関係である。この中の、3つめのパートナーシップが重要である。
苦労を共有し、その困難のなかで共に歩むことができると感じる瞬間、信頼と尊厳の人間関係が確かめられ、その尊厳のために人道的な支援に立ちあがるのである。新しい人間関係が深まり、多様性の共存が生まれる。これが、相互扶助ということである。
かつて、サハリンの震災、スマトラの津波災害などへの支援において、AMDAの国際的緊急人道支援活動は、このような人間関係のもとでなされてきた。アフガンの内戦において苦悩する子ども達への支援においても、次の世代を担う子ども達をどのように助けるのかという一点において支援が成立していった。それは、文化の違いを理解するというところからしか始まらない。時には、わからないことがあるということをわかり合えて、苦労をともにできる。そこにパートナーシップは生まれる。
日本人にはその価値判断があり、スリランカ人にはまたその価値判断がある。両者では、例えば誕生日のお祝いの仕方が違う。この、文化の違いを知ること、他の国の価値をわかるということは、その人達とのつき合い方を知るということである。
福山大学には多くの留学生が来ているが、そこでも、人と人との、ものの見方、考え方が、違う。しかしそこには多くの可能性がある。異なる、ものの見方と考え方が財産になるからである。
「グローバル社会における人のあり方」とは、文化の違いを踏まえたパートナーシップ、尊敬と信頼の関係である。
私たちは、菅波先生のお話から何を考えるのでしょうか。先生は、AMDAの活動と国際貢献を具体的に紹介しながら、いわゆる「人のあり方」を語って下さったのだと言えるかもしれません。
講演終了後、ひとりの学生が先生の控室にやってきました。今、自分が行っている支援活動で、被災した人に対してどのように振る舞えばいいのかと質問していました。丁寧なアドバイスを先生からいただき、意を強くして学生は帰っていきました。
教養講座の講師を務めてくださった方には、講演の後に、いつも色紙に一筆したためていただいております。菅波先生は、太い字で力強く「違いは財産」とお書きになりました。
学長から一言:菅波茂先生、熱いお話をありがとうございました!「あなたの文化で大切にしていることは何ですか」と尋ね、その内容に敬意を払うことが、異文化の人との信頼関係を作る基礎になる、というようなお話もありました。。。同じ文化圏にいるもの同士でも、学生と教員の間でも、「あなたが大切にしていることを、私は大切に思う」ということは大切ですねッ!