【生物工学科】大学院生が哺乳類学会で発表!

【生物工学科】大学院生が哺乳類学会で発表!

コロナ禍だからこそ研究交流を活発に行い、お互いに刺激を与えたりもらったりすることはとても大切なことです。学会も様々な工夫をしています。生物工学科の動物学研究室に所属する大学院生の安田皓輝くんが、日本哺乳類学会2021年度オンライン大会(8月28日~31日)に参加してポスター発表を行いましたので、生物工学科の佐藤が報告します。

オンライン開催

大会ではプラットフォームが立ち上がり、その中でポスターを見ることが出来たり、受賞講演や自由集会をZoomで視聴出来たりしました。今回の大会の参加者は792名で、1000名ちょっとの学会としてはかなり多い参加者です。オンラインということもあって旅費はかかりませんし、発表を聞くだけであれば格安の価格設定が可能であったため、ずいぶんと参加者が増えたようです。他の学会では、仮想会場があり、そこを動き回って人と交流することもできるそうですね。災難の中で何とかしようとする人の力はすごいです。今後の学会の在り方が変わってくるかもしれません。

安田くんのポスター発表

大会オンラインプラットフォームから以下のような画面にいき、発表資料をクリックするとポスター発表を見ることが出来ます。何か演者と話したいことがあれば、コアタイムに発表資料ボタンの右隣の青いボタンを押せば、Zoomで直接話すこともできます。また、左側の緑色のボタンを押せば、文字で質問をすることもできます。安田くんの質疑応答コーナーにはたくさんの質問があり、皆さんの関心が高いことが分かりました。これまでに読んできた本や論文の著者の訪問もあり、刺激を受けたようですね。良いポスターでした。お疲れ様!

残念ながらオンライン開催のため、ポスターの前で記念撮影を撮ることはできなかったので、私(佐藤)の部屋で記念撮影を行いました。安田くんの発表情報については、以下のとおりです。なお、この発表には過去に研究室に在籍した2名の4年生の成果も含まれています。

安田皓輝、森田奈々、大久保槙人、佐藤淳(2021)瀬戸内海島嶼におけるアカネズミの地理的遺伝構造.日本哺乳類学会2021年度大会(8月28日、オンライン開催).要旨集 p. 96.

その他の発表

安田くんの発表に加えて、動物学研究室では以下の発表を行いました。

自由集会

佐藤淳、篠原明男、黒岩麻里、鈴木仁(2021)【自由集会企画】 野生のネズミに学んだ遺伝学. 日本哺乳類学会2021年度大会(8月28日、オンライン開催). 要旨集 p. 31.

佐藤淳(2021)野ネズミの糞中DNAから学んだ生態系. 【自由集会】 野生のネズミに学んだ遺伝学(佐藤淳、篠原明男、黒岩麻里、鈴木仁). 日本哺乳類学会2021年度大会(8月28日、オンライン開催). 要旨集 p. 31.

ポスター発表

角井建、木下豪太、原田正史、佐藤淳、加藤克、鈴木仁(2021)次世代シーケンサーによるSNP解析と頭骨の形態解析によるコウベモグラの集団形成史の解明.日本哺乳類学会2021年度大会(8月28日、オンライン開催).要旨集 94.

ムラノ千恵、佐藤淳、東信行(2021)積雪地域のハタネズミに冬季繁殖期をもたらす餌資源:DNAメタバーコーディングによる解析.日本哺乳類学会2021年度大会(8月28日、オンライン開催).要旨集 99.

学会を終えて~安田くんの感想~

学会に参加した安田くんから感想が届きました。300文字って言ったのに!まぁ刺激を受けたということでよかったよかった。今の技術が活きる就職先も決まりましたので、あとは学会で得たものを取り入れて、修論作成や学術論文作成に向けて頑張ってください!

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学長室ブログをご覧の皆さま、こんにちは。福山大学大学院工学研究科博士前期課程2年の安田皓輝と申します。8月28日~31日にオンラインで日本哺乳類学会2021年度大会が開催され、その中でポスター発表の発表者として参加しましたので、報告させていただきます。

私は、今現在、瀬戸内海の島の森林に生息するアカネズミの研究を行っております。主に、野外調査と遺伝子解析を中心に研究活動を行っており、日々、新しい発見の連続で知的好奇心が刺激されるような毎日を送っております。

この度のポスター発表では、島に生息するアカネズミの集団遺伝構造について新しい発見があったので、『瀬戸内海島嶼におけるアカネズミの地理的遺伝構造』というタイトルで発表させていただきました。これまでの研究で、瀬戸内海の島のアカネズミは遺伝的に本州のアカネズミと近縁であり、遺伝的多様性も低い傾向にあるなど様々なことがわかってきました。

そこで、私は島同士のアカネズミがどれくらい遺伝的に離れているのだろうと疑問を持ち、それをひと目でわかるようにできないかと解析を行い、遺伝情報を1枚の地図にまとめました。その結果、約2万年前に瀬戸内海が陸地だった頃に存在したとされる古代河川が、アカネズミの遺伝的な分断に影響を与えた可能性が出てきました。

2万年前の古代河川という突拍子もないタイムトラベルのような内容に、長年、哺乳類の研究をされている方々がどんな反応をされるのだろうとドキドキして発表しました。Zoomというオンライン会議機能を使って、ビデオをオンにして待機していると、なんと『日本のネズミ 多様性と進化』の著者である京都大学総合博物館の本川雅治先生がポスターを見に来てくださり、一対一で議論させていただくという、なんとも光栄な機会が訪れました。とても緊張しました。そして、またしばらくすると、私の指導教官である佐藤教授の恩師であり、日本の哺乳類研究を最前線で牽引されてきた北海道大学の鈴木仁先生とチャット機能でやり取りするなど、衝撃の連続でした。

ああでもない、こうでもないと解析して作った1枚の地図に、皆様が興味を持っていただけた様子だったので、また今後の研究にも精進しなければと改めて思いました。

加えて、『野ネズミに学んだ遺伝学』という演題で開催された自由集会では、佐藤教授の口頭発表もあり、“瀬戸内海”という島が集まった日本の中でも独特の地理的構造を持つ地域で野生動物の研究ができる有り難さを実感いたしました。

この度は発表の機会を与えていただき、誠にありがとうございました。

安田皓輝

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学長から一言:日本哺乳類学会年次大会での安田皓輝君を筆頭発表者とする研究発表についての本投稿は、きっとそれが際立って優れた研究成果だったからでしょう。おめでとう、アカネズミの生態に取り組んで来た努力に最大限の敬意と祝福を送ります。佐藤教授自身の発表やその指導を受けた院生・学生諸君の発表など、生物工学科動物学研究室の活発な研究活動、そして皆さんの晴れがましさが容易に想像できます。コロナ禍という逆境の下で、他学会も含めて否応なく拡がっているオンラインでの大会開催は、国内はもとより世界のどこでも、空間のバリアーが今や簡単に越えられることを示しています。

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