【薬学部】学生と教員が近隣小学校で遺伝子に関する講義を実施!
7月19日(月)、薬学部の「病態生理・ゲノム機能学研究室」の学生2名(5年生の吉岡利紗さん、山岡愛主さん)と教員2名(道原明宏 教授、松岡浩史 准教授) が「尾道市立西藤小学校」に赴き、3・4時間目を使って5年生21名と6年生28名を対象に、遺伝子を利用した未病対策に関する教育啓発活動を行いました。道原教授と松岡准教授からの記事について、学長室ブログメンバーの薬学部・猿橋が報告します。
西藤小学校は福山大学から一番近くにある小学校です(車で3分ほど)。以前から同校の先生やPTAの方々から大学と一緒に課外授業などの取り組みができないかという意見をいただいていました。
また、「未来創造館」11階の展望エリアからも見える場所にあります。もちろん、西藤小学校からも「未来創造館」が見えます。
まず最初に、アイスブレイクとして、西藤小学校と未来創造館をFaceTime通話でつなぎ、福山大学のロゴ入り白衣を着た学生同士がライブ中継を実施しました。さらに、福山大学オリジナルのロゴ入りマスクもつけています。
「未来創造館」から見る大学の風景、オープンラボの開放的な実験室、実験室内に設置してあるPCR装置、3階から10階までの吹き抜け階段、学生の憩いの場であるセミナー室など、日ごろ目にすることができない風景に小学生は興味津々、そして大画面ディスプレイを食い入るように見ていました。
次に、今日の授業で理解してもらう遺伝子に関する選択肢問題を8問解いてもらいました(プレテスト:5分)。5年担任の大空先生も、テストの様子を見守られていました。
ここからが本題です。学生と教員がシナリオやイラストを考え、学生が吹替を行ったオリジナル動画講義を10分程度、視聴してもらいました。
そして、6年担任の松野先生も一緒に動画講義を視聴していただきました。
これで終わりではありません。もう一度、遺伝子に関する選択肢問題を8問解いてもらいました(ポストテスト:5分)。さらに、この動画講義の内容について、分かりやすいと思ったこと、難しいと思ったこと、自分でもっと調べてみたいと思ったことについても自由に記述してもらいました。
私たちが考案した遺伝子に関するテスト連動型動画講義の有効性については、子どもたちからの解答を大学に持ち帰り、プレ・ポストテストの結果に基づき解析していきます。そこで、「動画講義はどうでしたか?では、答え合わせをしておきましょうね!」と、子ども達に語りかけました。
その後、学生たちがメインとなり、セントラルドグマ(遺伝情報の流れ)、遺伝情報から何がわかるのか、遺伝子と病気、遺伝子と薬の効き方などを簡単に説明していきました。また、疾病予防の1つの手段として、遺伝子を役立てもらいたいことについても小学生に対し、熱く語っていました。
次に、「何か質問や感想などがあるか、グループで話し合ってみてください!」と呼びかけました。
最後に、学生たちが作成した限定4つのDNAストラップ争奪「ジャンケン大会」を行いました。欲しい!!欲しい!!の大声援が沸き上がりました。
子ども達全員にDNAストラップが行き渡らなかったことから、「もう少し作っておくべきだったなぁ」と後悔しつつ、教室を後にしました。
授業後は校長室に移り、本藤校長と意見を交わしました。『西藤小学校と福山大学はとても近いのに、小学校にとって大学は遠い存在です。イキイキとした大学生の存在は、小学生たちが自分たちの近い未来を思い描くキャリア教育にも通じる取り組みで、今後も福山大学との関わりを大事にしていきたいです。』と仰っていました。
また、中国新聞社の記者も興味を持っていただき、取材に駆けつけてくださいました。なお、この西藤小学校と福山大学の取り組みは、7月27日(火)の『中国新聞』朝刊にも掲載されました!
「病態生理・ゲノム機能学研究室」では、これまでに以下のような社会活動も行い、学会誌等で報告してきました。
◎中学生に対する遺伝子の教育
2015年【鹿児島県喜界島でのアイランドキャンパス事業、社会薬学 36(1) 27-35, 2017 掲載】
◎地域住民に対する遺伝子の教育
2018年【府中学びフェスタにてダンスユニット・シュメルツミッテルとコラボ、YouTube配信】
2018年【大学祭にてゲノムアカデミアとコラボ、社会薬学 38(2) 50-60, 2019 掲載】
◎大学生に対する遺伝子検査に関する研究
2019年【社会薬学 38(1) 2-13, 2019 掲載】
◎薬局スタッフと一般市民に対する遺伝子検査に関する研究
2021年【日本健康医学会雑誌, 2021 in press】
これまで、小学生に対する遺伝子がらみの授業や啓蒙活動は、集中力・理解度の観点から行っていませんでした。しかし、一般的に、小学生を対象とした飲酒・喫煙防止をはじめとする啓発活動は、日本中の多くの場所で行われています。私たちは、作成した動画を用いて小学生の年代から遺伝子を利用した未病対策に関する教育を行っていき、セルフメディケーション・生活習慣病予防等につなげたいと思いますし、今後も、学生たちと試行錯誤しながら、遺伝子の教育に関する啓発活動を近隣住民、小・中・高校生に対して行っていきたいと考えています。
以下は、授業を行った学生たちのコメントです。
吉岡さん:講義資料を準備する上で、常に小学生の理解度や集中力が懸念材料でした。どうしたら、小学生が難しい内容を理解し、この動画講義を楽しんでくれるのか頭を悩ませました。当日、小学生の反応がどうなるかドキドキしながら教室に向かいました。しかし、子どもたちの元気なあいさつや食い入るように動画を見る姿にその心配はかき消されました。小学生の素直で無垢な姿に刺激を受けました。この体験が小学生にとって、難しいことでもきちんと知ることにより自分の生活に活かすことができるという学びになればと思います。
山岡さん:10分程の動画講義を受けただけで、ハイレベルな質問が出たときは驚きました。それだけ、小学生の皆さんがこの授業を真剣に取り組んでくれていると実感でき、とても有意義な時間となりました。これを機に、遺伝子と疾病予防の関係について興味を持ってくれると嬉しいです。
学生たちの熱い思い、君に、届け!!
学長から一言:初対面の小学生を相手に、病気に向かう状態(未病)と遺伝子との関係という、考えようでは実に難しい問題を分かりやすく解説するのは大変だったでしょう。短時間で打ち解けた雰囲気を作ることから始まって、薬剤師に必要な資質であるコミュニケーション能力を磨く訓練でもある活動は、薬学部の目指す教育目標とも合致しているのでしょう。人に「教える」ことは最高の「学び」。これからも息長く続けて欲しいものです。