【海洋生物科学科】シロギス養殖技術開発で連携の(株)クラハシの代表が学長室を訪問
皆さん、「しまなみテッポウギスプロジェクト」をご存じですか?福山大学のブランディング研究「瀬戸内の里山・里海学」の一環で進められ、地域資源を活用し、地元に貢献できる新技術の開発を試みる研究とその成果の実用化・商品化を行うプロジェクトです。このたび、連携企業の代表者が学長室を訪問して下さった機会に、この魅力的なシロギス養殖事業のこれまでとこれからについて、海洋生物科学科の有瀧教授(附属内海生物資源研究所・所長)からレポートが届きましたので、海洋生物科学科学長室ブログ委員の阪本がお伝えします。
しまなみテッポウギスプロジェクト
4月16日(金)午前、(株)クラハシの天野文男社長と倉橋彩子専務が学長室を訪問され、大塚豊学長と “教育と地域企業の連携” について熱く語られました。
以下、これまでのシロギス養殖事業の経緯や今後の展開について報告します。
福山大学では、地域資源を活用して地元に貢献できる新たな技術の開発を試みています。その一つに、天ぷらで有名なシロギスの養殖を検討する「しまなみテッポウギスプロジェクト」があります。現在までに、基礎的な飼育方法を開発することに成功し、地元のお寿司屋さんと商品開発及び評価も実施してきました(https://www.fukuyama-u.ac.jp/blog/25568/)。
しかし、技術は「実際に社会で使われて何ぼ」です。そこで、海洋生物科学科は総合卸売商社のクラハシさんとタッグを組んで大量に養殖し、市場へ流通させる事業を3年前にスタートさせました。
瀬戸内海から安心・安全・美味しい食文化を発信
クラハシさんは、鮮魚や冷凍食品を中核に水産物を取り扱われる会社ですが、それにとどまらず「瀬戸内海から安心・安全・美味しい食文化を発信」することをモットーに、活魚の出荷調整システムの開発や漁獲物の加工販売、魚食の普及など幅広い活動をされておられます。その一環として魚類の養殖事業を展開し、シロギス養殖については温暖な沖縄県伊平屋島の施設で、短期間に効率的かつ実証規模での生産を目標に、福山大学との連携の下に実施してきました。これまで卵を確保する親魚候補の育成、採卵、稚魚までの種苗生産、養殖技術の開発など段階を経て、現在50KLの大型水槽を用いた生産に着手しています。
この過程で、福山大学では伊平屋島施設で生じた様々な課題や問題を因島キャンパスで検討するとともに、現場での技術指導や検討会の開催など、養殖・出荷に向けてサポートを続けてきました。これらの一部は、4年生の卒業研究や大学院修士課程での修論作成に向けた研究として行い、短期間のうちに9名もの学生が関わってきました。
養殖シロギスを市場に出荷
令和3年度には、いよいよ実際に養殖シロギスを市場に出荷し、価格や利用状況を明らかにすることを計画しています。この研究は4年生2名が担当し、クラハシさんの協力を得て福山地方卸市場において6月~12月の7ヶ月間、毎月の調査を行います。その過程で、時期による価格の変化や出荷先、使用用途などを天然魚と比較・評価していきます。学生たちはすでに実施計画を作り上げるとともに、それをもとにクラハシさんと2回の打ち合わせを行っており、やる気満々です。
このような取り組みは、大学としてのアウトリーチ活動としても極めて重要ですが、学生にとっては学内だけでなく、一般社会と接点を持つ事で社会的能力・経験を得ることができるアクティブ・ラーニングとしても得難い場となります。
福山大学では、備後地域の地域資源の維持・利活用を目的に “ブランディング推進のためのプロジェクト「瀬戸内の里山・里海学」” を推進していますが、クラハシさんとのシロギス養殖事業は本プロジェクトの大きなエンジンとして位置付け、これからもエネルギッシュに活動していくつもりです。
シロギス養殖事業の今後に、乞うご期待!!
学長から一言:気候の変動や近隣諸国の乱獲によって、海洋資源の減少や枯渇が心配されています。これからは、農業もそうですが、漁業も「育て、増やして」行くことが不可欠でしょう。国の安全保障にとって、「食の安心・安全な確保」は喫緊の課題です。我が海洋生物科学科の出番、活躍の場が無限に拡がっていますね。地元企業を支え、地元企業に支えられて、共に発展して行きましょう!教職員、学生の皆さんの双肩にかかっています。株式会社クラハシの天野社長、倉橋専務、先日は有益なお話を有り難うございました。これからもますます緊密な連携を期待しています。