【メディア・映像学科】学科教員が放送文化基金の研究助成に採択!
メディア・映像学科の丸山講師が「モノから考える戦前戦後のローカル放送史―JOBKによるラジオ塔建設の試みを中心に」という研究で、公共財団法人放送文化基金の研究助成に採択され、贈呈式で人文社会・文化部門の代表として挨拶を行いました。学長室ブログ担当の渡辺が報告します。
公共財団法人放送文化基金
広く放送文化の発展に寄与することを目的として、1974年に設立された民間の財団です。2014年に設立40周年を迎えました。
▼放送に関する調査・研究や事業に対する助成
▼優れた放送番組や放送文化・放送技術における業績の表彰「放送文化基金賞」
▼制作者フォーラムの開催など人材育成の支援を主な活動としています。
(https://www.hbf.or.jp/about/article/hbf より引用)
が行っている研究助成に、丸山講師の「モノから考える戦前戦後のローカル放送史―JOBKによるラジオ塔建設の試みを中心に」という研究テーマが採択されました。そして、3月2日(火)にホテルルポール麹町にて開催された贈呈式において人文社会文化部門を代表し、挨拶と研究紹介を行いました(写真:法政大学社会学部武田俊輔先生撮影)。
今回、採択された研究テーマについて、丸山講師に聞いてみました。
このたび、放送文化基金2020年度助成の人文社会・文化部門にて採択された研究は「モノから考える戦前戦後のローカル放送史—JOBKによるラジオ塔建設の試みを中心に」というテーマです。
ラジオ塔は、スピーカーと受信機を内蔵した石塔として1930年代に公園や神社などの「屋外」に設置され、現在はそのメディア遺構が関西を中心に多く残っています。しかし、その石塔が何のために建設されたものなのか、どうしてこの場所に建設されたのか、その歴史を知る人は今ではほとんどいません。
以前のブログでも話しましたが、私の博論プロジェクトは1957年から1964年に放送された日本初のテレビ・ドキュメンタリーシリーズ『日本の素顔』を通じて、いかにテレビ・ドキュメンタリーという表現形式が形成・成立したのか明らかにすることを目的にしていました。これを論じるため、私は現存する番組をすべて見直し、放送台本や番組に関する雑誌・新聞記事、さらに局内誌や人事異動に関する資料を収集し、存命する番組関係者の所在を調査して当時の話をインタビューするという方法で研究に取り組んできました。
そのプロジェクトに取り組む過程で、日本のテレビ・ドキュメンタリー史の初期において、在阪の放送人が果たした役割が想像以上に大きいことに気がつき、NHK大阪放送局の歴史を調べるようになりました。NHK大阪放送局は、1925年に社団法人大阪放送局として発足し、日本で2番目に放送許可を得た放送局だったのでJOBKというコールサインを付与されます。それを省略して、大阪の人々はBKという愛称で大阪放送局を呼びました。
「とにかくBKに関する資料は全部集めよう!」
そう決意した私は、関東と関西を行き来しながら資料の所在を調査したり、番組関係者やその遺族に対してインタビュー調査をしたりしてきました。その最中に出会ったのがラジオ塔です。1995年に刊行された社史『こちらJOBK—NHK大阪放送局七十年』のページをめくると、ラジオ塔はBKが考案したものであることもすぐわかりました。
「世界で一番BKを語れる研究者になる!」と決意していた私には、ラジオ塔がキラキラ輝く宝石のように見えました。そうして2017年、ウォークラリーするような気持ちでラジオ塔巡りを始めました。最初は関西を中心にラジオ塔を探し歩き、次に学会発表がてら名古屋市内のラジオ塔を探訪し、地元横浜にも1基残っていたので野毛山に残るラジオ塔を調査しました。
このように足でラジオ塔を調査する一方、東京都港区にあるNHK放送博物館資料室で1925年から1940年ごろまでに作成されたBKに関する資料の調査も行いました。「BK…ラジオ塔…BK…ラジオ塔…」とぶつぶつ言いながら資料探しをしている私が不憫だったのでしょう。資料室スタッフの方々はとても優しく、様々にサポートをしてくださいました。そうしてラジオ塔に関する資料を探し始めて約2年。『放送史料集 大阪・事業成績報告書』という史料集と出会い、その原本である事業成績報告書の大正15年から昭和12年までを発掘するという奇跡へと繋がっていきました。
この史料に基づいて、ラジオ塔の開発経緯を記した論文を福山大学人間文化学部紀要第21巻に寄稿しました。是非、読んでみてくださいね。今後は、さらに2020年度放送文化基金の支援を受けて、関東と甲信越のラジオ塔を調査すると共に、NHK放送博物館とNHK放送文化研究所にご協力をいただきながら、ラジオ塔が全国化していった背景と幻に終わった2つの大メディア・イベントである紀元2600年記念日本万国博覧会と東京オリンピックとの関連性を明らかにしていくつもりです。
なお、丸山講師は今年度着任の若手教員で、第9回日本マス・コミュニケーション学会優秀論文賞を受賞するなど、今後の活躍が期待されています!
学長から一言:こんな研究領域もあるの!?!という感じですが、おもしろいですね~!スマホ時代の学生の皆さんの中には、きっと興味を引かれる人がいるでしょう。。。授業などを通じて、ぜひ学生を巻き込んだ研究活動にして欲しいですねッ!!!