【人間文化学科】オンラインで学ぶ「文章表現」―「日本語表現法」の事例紹介
オンラインでの授業について、学生に意見を聞くと「自分のペースでじっくり取り組むことができる」という答えがよく返ってきます。これはオンライン授業のメリットだと言えるでしょう。
学長室ブログメンバー、人間文化学科の清水です。こんにちは。今回は、人間文化学科の教員によるオンライン授業についてお伝えします。「日本語表現法1」(人間文化学科版)について、青木教授からの報告です。非常に読み応えのある授業内容に加え、授業スライド、そして発表作品の紹介をしています。大学でのオンライン授業について知りたい方は、是非参考にしてみてください。
日本語表現法1(人間文化学科版)について
授業の目的など
「日本語表現法」(半期2単位)は、全学共通教育に分類される1年生の必修科目です。人間文化学科では、これを「日本語表現法1・2」と通年科目で開講し、人文学を専攻する人間文化学科における卒業論文の基礎的な文章力を身につけることを目指しています。
今年度は3分の2がオンライン授業となりましたが、レポートは一定の水準に達したものが提出されており、具体的な資料(「レポートの書き方」PPT動画・文章のアウトラインのWord資料)に基づいて熟考した成果が見られました。作品例を参照してください。
また、レポートの出来については、担当する授業のすべてにおいて同様の傾向が見られ、受講生が資料と向き合い、深く考察したことを実感しました。オンライン授業の可能性を感じています。
授業で何ができるようになるか
・起承転結の4部構成の文章を書く。
方法
・「読む」から「書く」へ
その授業の学習成果は「日本語表現法1」では、起承転結の4部構成の文章を書くことで、エッセイとレポートの2つの課題に取り組みます。そこで重視しているのは、文章を読む力→文章を書く力という「読む」から「書く」へという学びの順番です。先ず、達人の文章を読み、その分析を通してその「型」を把握し、その型に倣って文章を書くことに取り組みます。スポーツ選手が自らのフォームを研究することと同じです。先ず、エッセイで自らのこれまでを振り返り、レポートでは客観的なテーマに取り組み、学術的文章作成の基礎を学びます。
全学のアカデミック・ライティング指導との連動
「注文の多い図書館」―読書技能習得コース・書評執筆コースの実施
「注文の多い図書館」は、本学図書館で実施しているオンラインの書評執筆講座です。
「読む」から「書く」へというトレーニングは、このコースを利用して、授業に生かしています。
〇エッセイの書き方
先ず、下記の文章を読みます。
達人…福原麟太郎著「汽車通学」・「亥の子」
福原麟太郎(1894~1981)は、福山市神村出身の英文学者で名エッセイストとして名高い人物であり、2作品ともに地元を舞台としたものです。
〇レポートの書き方
レポートのテーマは、学生にとって切実な現代的問題を毎年取り上げます。今年のテーマは「新型コロナウイルス後の社会のあり方について」です。今年の1年生は、入学後に突然オンライン授業を経験した稀有な学年ですので、これについて主体的に取り組みやすいこと、彼らが卒業後に直面する問題を予想することになるであろうこと、この2点からこのテーマとしました。
レポート作成は、文献資料の要約から
①「新型コロナと人類 危機は変革の好機だった」
中国新聞 2020年5月10日「核心評論」共同編集委員・福島聡
②新型コロナと人類「生態系破壊をまず止めよ」 ラッセル・ミッターマイヤー
中国新聞 2020年5月8日「識者評論」
③「コロナ危機と物語の力」児童文学作家 朽木祥
中国新聞 2020年6月28日 オピニオン・特別寄稿
④「新型コロナと文明」フランスの思想家 ジャック・アタリ
中国新聞 2020年7月19日 オピニオン 特別評論
※①②③については、要約を提出後に青木教授の要約例を提示、問題点をコースニュースで提示、自分の要約についてスレッドで意見投稿させています。
レポート作成は3ステップで
ステップ1 テーマの決定と論文構想のメモ提出→テーマ例の提示とコメント (解説資料…レポートの書き方①の提示)
ステップ2 レポート提出①→個人宛に添削、優秀作品を提示して、講評、スレッドに意見投稿
(解説資料…レポートの書き方②の提示・文献資料の追加)
ステップ3 完成レポート提出
※なお、レポート作成が苦手な学生を念頭に、レポートアウトラインも提示しています。
優秀作品として、エッセイ3編、レポート2編を紹介します
エッセイ「理想の僕は……」はそれぞれクラブ活動のこと、「兄弟の不思議」は家族のこと、「出会い」は大学での学びのテーマとの出会いを述べたものです。いずれも起承転結と具体的な表現に工夫があります。
レポート2編はそれぞれに主体的問題意識があり、コロナ後の社会のあり方について、大学の教育について、働き方について、独自の問題意識と文献調査に基づいて考察しており、今後の社会の問題点を指摘しています。
「新型コロナウイルス後の社会のあり方について」
後期の「日本語表現法2」では、物語分析を通して文章の読解とその文章化に取り組みます。「物語分析」では、分析の方法を身に着けるとともに発想力を鍛えます。最後は、アニメ「千と千尋の神隠し」についての評論を書くのがレポートです。これについては、アニメを見て分析表を作成し、それを基に物語についての解釈を文章にします。いくつかの評論も授業で紹介し、それを入り口とします。その紹介資料です。
ここで、優秀作品を1編紹介します。独自の着眼点による分析と先行研究を踏まえた考察を展開し、物語についての独自の解釈を述べています。
学長から一言:今後のすべての学習の基礎になる、1年生用の必修科目を、オンラインで工夫して、しっかり思考を行う素晴らしい授業に仕立て上げましたねッ!青木教授の学生への強い期待は、きっと学生に通じる事でしょう!