【生物工学科】ウイルス感染の有無の検査法を学ぶ
コロナウイルスやインフルエンザウイルスに感染したかどうかを検査する手法は、バイオテクノロジーの分野で生まれました。バイオテクノロジーを学ぶ学科である生物工学科では、PCRなどのDNA分析だけではなく、抗体を使った免疫学的手法についても学びます。今日は、2年生対象の細胞生物学実験で行ったELISAの学習の様子を生物工学科の佐藤が報告します。
ELISAのEはEnzyme(酵素)のE、IはImmuno-(免疫)のIです。ELISAとは酵素と免疫が関わる測定法で、ウイルスなどの体外から侵入した異物を検出する測定法としてよく使われます。ウイルスなどの感染の有無は目で見てわかるものではありませんので、どうにか目で見える形に可視化しなければなりません。今回の実験では、西洋ワサビペルオキシダーゼという酵素が無色の物質を青色の物質に変換する反応を利用しました。一方、免疫とは疫(病)を免れる体の仕組みです。中でも、ELISAでは抗体を利用します。私たちの血液中には白血球が存在しますが、その中でB細胞と呼ばれる細胞が抗体産生細胞に分化することで抗体をたくさん産生し、体内に放出します。抗体はウイルスを無毒化したり他の免疫細胞を誘い出したりと、体外から入ってきた異物を排除しようと体内で活躍しています。抗体はその異物に対して特異的に結合するため、その異物の有無を調べるのに有効なのです。
実習で学んだ原理は、以下の図のようなものです。酵素は2次抗体に結合しており、もし抗原が存在したら、それに1次抗体が結合し、さらにそれに2次抗体が結合することで、2次抗体に付いた酵素が無色の物質を青色の物質に変換します。一方で、抗原が不在であれば、酵素を持つ2次抗体が最終的に存在することができないので無色のままとなるといった原理です。
2年生は、マイクロリットルレベルの液体の吸引・排出にはまだあまり慣れていませんので、この実習を通して正しい量の試薬を、正しい場所に、正しい順番で加える練習をします。最初は力が入ってしまいますよね。ここは、実験台に肘を付けて腕を固定するのがポイントです。
下の写真は洗浄の様子です。前のステップで反応させた試薬が残っていると実験がうまくいかないので、途中途中で洗浄作業が必要となります。この洗浄液には、抗体がプラスチックにくっついてしまわないように界面活性剤が入っており、少し専門的にいうとブロッキング剤としての役割もあります。
さて、最後に無色の試薬(酵素により青色になる)を加えると、じわじわと色の判別ができるようになります。実は、実験の最初に受講生には1人1本ずつ液体の入ったチューブを渡しており、その中で3つにだけ抗原(何かのウイルスと見立てましょう。実際には無毒のタンパク質)を忍ばせました(それを知っているのは私だけ。ふっふっふ)。そして、受講生の間で何回か液体を混ぜてから(濃厚接触による感染と見立てましょう)実験を行いました。自分が持っているチューブに抗原が入っているのか、いないのかわかりません。実験の結果を見てみると、20名が陽性でした。最初は3名だけだったのに。それでは感染源はどこにあるのか?っということを最後に受講生全員で議論をしました。うまく感染源を絞り込むことができましたね。
幸か不幸かバイオテクノロジー・生物工学は、時代が求める学問分野となっています。今こそ、バイオテクノロジーの読み書き能力(バイオリテラシーと呼びましょう)を身につけるべきときではないでしょうか?生物工学科では、様々な分野の教育・研究を行っています。興味のある皆さんは、是非こちらの動画サイトから学科のことをもっともっと知っていただければ嬉しいです!
学長から一言:念仏のように“新型コロナウイルス”とか“PCR検査”と言っているレベルから、それらを科学する領域に入りましたねッ!生物工学科の2年生はこんな事も学ぶんだ!!!