【スマートシステム学科】システム工学で事業成功へ:(財)中国地方創造研究センターでの調査検討活動を学術論文化

【スマートシステム学科】システム工学で事業成功へ:(財)中国地方創造研究センターでの調査検討活動を学術論文化

システム指向の学術研究としてシステム工学を一つの軸にしている、福山大学工学部スマートシステム学科(フェイスブックはこちら)からの報告です。

最近、企業や自治体の事業が必ずしも成功できていないことは皆様もお気付きでしょう。また、最近ドローンがメディアやインフラ点検などで活用され、事業としての展開が始まろうとしています。そこで、地域活性化に役立つドローン活用事業を中国地方で成功させる方策について、システム工学を適用して関田准教授が研究しましたので、その紹介をお届けします。

関田准教授の学術論文「施策立案における事業者側と住民側の意識形成の定量的把握」は、広島修道大学商学部の橘准教授との共著で、公益事業学会の論文誌である公益事業研究第72巻第1号に掲載されています。

写真(1) 公益事業研究表紙         写真(2) 論文1ページ目

 

今回の関田准教授の研究報告をインタビュー形式でお届けします。

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Q.この研究の発端や動機は何でしょうか?

ドローンは、政府の成長戦略に位置付けられておりメディアでの低空からの美しい動画はドローンによるものが多く、災害対応、インフラ点検、測量、そして宅配など物流での活用が期待され、国内の市場規模も右肩上がりとされています。中国地方をドローン先進地域にするという目的で、(財)中国地方創造研究センターが2018年度に経済産業省中国経済産業局の委託を受けて、企業、自治体、大学等の研究機関の方々を委員とする調査委員会で検討調査を実施しました。私はその委員長でしたが、調査委員会では国内外でドローンを社会実装化するために実施中の研究、企業や自治体での実証実験の状況、そして事業展開を既に開始している企業の事例を調査して、今後の中国地方での推進体制や支援施策を打ち出そうとしていました。しかし、実施側の調査だけでは片手落ちで、離島や山間部が多い中国地方に住む方々がドローンをどう認識しているのか、事業展開への要望や懸念は何かを調べることが、システム工学の視点からすると、まず実施すべきと考えたことが研究の発端です。

Q.この研究はどのようにして、進められたのでしょうか?

欧米と日本では、環境が大きく異なることからドローンを社会実装するには欧米よりも多くの課題があります。まず、ドローン活用の現状や社会実装に向けての取り組みなどについて、委員会として文献調査、ヒアリング、事例視察により把握しました。現状把握の一環で、全国のドローン活用に実績がある、あるいは見込みがある企業243件、自治体282件に対して、どの様な機体をどの分野で何をするためにどう活用しているか、または活用したいか、そして課題は何かをアンケート(郵送)で調査し、同時に中国地方5県の住民を対象にしたWebアンケート調査(26問)で2,969件のデータを収集しました。また、住民対象のアンケートと同じものについて、中国地方の企業259件と自治体50件からもデータを得てあります。このアンケート調査では、以下の3 つの仮説を基にして中国地方の住民と企業・自治体の間でドローンへの期待や地域活性化策で共通している項目や相違のある項目をt検定により分析し、潜在意識を知るために共分散構造分析を行いました。

仮説 ① ドローンに対する意識は現在活用されていて良いことを知っている。  

   ② 将来のドローン活用に対して期待を持っている。

   ③ ドローンの活用には心配と懸念が未だ残る。

その結果、現状のドローンは故障時の落下や飛行時間の短さからまだ使えないと認識していること身近での活用による生活利便性向上や社会を豊かにする方向への期待が低いということが浮き彫りになりました。さらに、検定の結果、26問中18問で企業・自治体と住民で回答に差異があると判明し、そのすべてで企業・自治体の意識が住民よりも強く「前のめり気味」という結果でしたが、ここまでギャップがあるとは事前に予想していませんでした。

写真(3) 日本気象協会での事例調査の一風景(一番左:関田准教授発言中)

Q. この研究結果はどのように活かされるのでしょう、また今後の展望は?

アンケートデータの共分散構造分析により、中国地方の事業者・自治体及び住民の潜在意識と完全に一致したドローンによる地域活性化モデルをグラフィカルに示した上で、施策を具体的に提案しました。これらを企業・自治体で実行できれば、中国地方はドローン活用により地域活性化を実現させることが可能です。企業・自治体の意識と住民の意識に差異があることについては、委員会の副委員長でもあった広島修道大学商学部の橘准教授(交通マーケティングが専門)と議論して、ドローン活用への政策的解釈、事業を成功させるために必要な利害関係者間での意識形成プロセスや意識醸成の要因を明確にして、共著の学術論文を完成させました。今回の研究成果により、中国地方のドローン事業が住民の期待に応えて成功することを期待しており、様々な事業開始にあたってシステム工学により適切に果たすべきミッションを設定し、住民の意識形成プロセスを定量的に推定して対立が発生する前に対策を検討することで事業の失敗がなくなることを期待しています。

Q. この機会に、ブログを見てくれている皆さんへのメッセージをお願いします。

高校生の皆さん、システム指向の工学をスマートシステム学科で学んで、社会をもっと便利で楽しく安全なものへ改善していきましょう!

 

学長から一言:試行錯誤で、エイヤッとやって失敗し、それから修正して、またエイヤッとやって失敗して修正する、というのを繰り返して、だんだん良くしていくというのではなく、システムとして前もって考えていこうと言うことかな?!?

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