【心理学科】「建設業 × 心理学」: 福山市の企業との共同研究を学術誌に発表!
心理学は「建設業」にも貢献します。効果的な休憩の取り方とはいかに!!
皆さんこんにちは。心理学科の福留です。屋内での時間が長くなりがちな今日この頃ですが、作業疲労と作業環境に関する共同研究について、認知心理学研究室の宮﨑由樹准教授よりご紹介いただきます。
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日本人間工学会の学術誌「人間工学」の56巻2号に、福山市の建物の改修専門会社である株式会社ラックスと公益財団法人中国地域創造研究センターとの研究成果を発表しました。
精神的疲労感をともなう作業後の短時間休憩の効果は、屋内に比べて屋上で取得した方がその効果が大きいことを示した研究です。中国地域創造研究センター質感色感研究会における共同事業の一環として実施しました。
*この研究は新型コロナウイルス感染症の発生前に行いました。
近年、屋上の利活用が積極的に進められています。
都市部の商業施設・オフィスビル・病院等を中心に、屋上緑化広場や屋上庭園などが整備され、屋上を憩いの場として活用することへの期待が高まっています。
それに伴い、屋上の緑化整備のリラックスないしリフレッシュ効果を検証する研究も増えています。
しかし、屋上の緑化整備が利用者の気分に及ぼす効果を検証した研究が進む一方、緑化整備がなされていない屋上空間そのものが利用者の気分に及ぼす影響を検証した実験的研究は見当たりません。
屋上緑化に係る整備や維持管理のコストを考えると、緑化整備されていない屋上空間(あるいはミニマルな整備空間) に、どの程度のリラックスないしリフレッシュ効果が存在するか明らかにすることは重要です。
この研究では、屋上空間が単調作業による精神的疲労感に及ぼす影響を調べることを目的に、以下の2点を検証しました。疲労感の評価にはProfile of Mood States 2nd Edition という標準化された心理検査を用いました。
1. 屋内に比べて屋上で単純負荷作業を実施すると精神的疲労感が高まりにくいか?
→ 実験の参加者は屋内あるいは屋上いずれかの実験環境で、単純負荷作業(文章の複写作業) を10分間行いました。こういった課題を10分間行うと、通常は精神的疲労感が高まります。屋上で作業をした場合に、この疲労感が高まりにくいか検討しました。
2. 屋内に比べて屋上で単純負荷作業後の休憩を取得することで、精神的疲労感はより大きく低減されるか?
→ 実験の参加者は単純負荷作業が終わった後、屋内あるいは屋上いずれかの実験環境で5分間休憩しました。休憩を取得すると精神的な疲労感が低減されます。この疲労感低減効果が、屋上休憩の方が大きいか検討しました。
実験の結果、単純負荷作業による精神的疲労感の高まりの程度は、屋内でも屋上でも変わりませんでした。しかし、休憩を取得することによる疲労感低減効果は、屋内に比べて屋上で休憩した方が大きくなりました。
この結果は、作業後の休憩を屋上で取得することは精神的疲労感解消に効果的であることを示唆しています。
この研究のように、空間・環境評価 (あるいはオフィスデザイン) に心理学の知識や方法を活かすことができます。
これまで福山大学の心理学科が実施してきたその他の企業との共同研究もご覧ください(過去の取り組み1、過去の取り組み2、過去の取り組み3)。
こういった共同研究には、心理学科の学生も協力してくれています。
今回の研究でも、3年生の山本美優さんがリサーチ・アシスタントとして参加してくれました。
高校生の皆さん、福山大学の心理学科で、企業が抱える課題の解決に一緒に取り組んでみませんか??
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定期的に屋上に出る人は少数派ではないでしょうか。心理学の力で、精神疲労に屋上での休憩が効果的であることがわかったからには、休憩には屋上に出たくなりますよね!しかしながら、私がいる研究棟には屋上がありません。残念です。
学長から一言:屋上での休息は、リラックス効果が大きいようですねッ!心理学の研究は、お・も・し・ろ・い!!!