【国際経済学科】ブルガリア・ソフィア大学で講義を実施! ~ Part1
国際経済学科のブログ担当、藤本浩由です。私は11月2日~11日の10日間、Erasmus+(エラスムス・プラス)プログラムによる教員交流の一環として、ブルガリア共和国の首都ソフィアに滞在し、ソフィア大学教育学部で講義を行ってきましたので報告します。
2年半前には、本学から大塚豊副学長・大学教育センター長が同プログラムによりソフィア大学で講義をされています。
私は経済学部の教員ですので、教育学部では専門の授業はそのままの形ではできないのですが、博士論文のテーマを「途上国の教育と経済」としたこともあり、「教育の経済学」というテーマで講義をさせていただくよう希望したところ、今回の派遣教員に採用していただきました。
ソフィアには、関西国際空港からドバイ経由でほぼ丸一日かけて到着しました。すっかり秋は深まっていましたが、ソフィアは福山より寒いという予想を裏切り、滞在期間中は暖かく、とても過ごしやすい日が続きました。
ソフィア大学での講義は、合計13単位時間行う必要があります。各講義のテーマは、あらかじめ私が準備した3~4つのトピックから教育学部のシイカ・コストヴァ(Siyka Kostova)教授が組み合わせを考え、各授業の参加学生に合うように割りふってくださいました。コストヴァ教授は、今回のソフィアでの講義全体をコーディネートしてくださった方で、以前福山大学にもいらっしゃっています。
さて、初回の講義です。この講義には、同じくErasmus+プログラムを通じてソフィア大学に留学している日本人学生が2人参加してくれましたが、開始時間通りに来てくれたのはこの2人だけでした。他の学生が集まって授業を始めたのは、開始時間から15分以上経ってからでした。「だいたいこんな感じです」と言われて、正直「ルーズ!でもなんかいいかも」と思ってしまいましたが、実はこの「15分遅れで開始」というのが大学での暗黙の了解なのだそうで、実際その後のすべての講義が15分遅れでスタートしました。コストヴァ教授の説明によると、これはソフィア大学だけの文化ではなく、他のヨーロッパの大学でも行われていることだそうで、ドイツ人のErasmus+学生も大きくうなずいていました。なるほど。講義の終了も予定より早いところをみると、1コマが120分に設定されていることと、講義間の休憩時間が設定されていないことの意味が理解できました。結局、福山大学の講義時間(1コマ90分)と実質同じくらいのようです。
肝心の講義ですが、私が英語で授業をするのは大学院生の時にアシスタントとして補講を担当して以来、もう何年ぶりにもなりますので、かなり緊張しました。実際、学生さんたちの反応も微妙で、あとから聞いたら「経済学寄りの話が多く難しかった」とのことでした。次回以降の講義の参考になったと同時に、準備してきたものがあまり使えないことがわかって少々焦りました。そこからは、OECDの発行する「Education at a Glance」の中から日本の教育に関連するデータや課題について紹介し、ブルガリアとの違いを中心に一緒に考えたり話し合ったりする時間を授業内に作りました。
やっと落ち着いて喋れるようになってきた3回目の授業中のことです。私の話を聞きながら、笑顔で首を大きく左右に振るブルガリア人学生が数人いました。「なにか間違ったことを言ったんだろうか?」「分からないという意思表示?」と大混乱したのですが、次の瞬間、ブルガリアのガイドブックに書いてあったことを思い出しました。ブルガリアでは、はい/いいえの首振りのジェスチャーが日本とは逆なのです。つまり、左右に首を振るというのは「そう思う」「分かった」の意思表示だったのです。「理解してくれている」という安心感と、それを一生懸命伝えてくれている学生さんたちの優しさに気づいたことで、ここから急激にリラックスでき、それ以降の授業はとても楽しめました。
ところで、授業の中で話題になったことの一つに、日本の幼児教育への公的支出額がOECDの他国と比べて低いというトピックがあります。まだまだ子育てが女性の役割と捉えられがちな中、保育施設・人員の不足や私費用負担の大きさが、子育て世代の女性の社会進出を妨げる要因の一つと見られているという話です。学生や先生が口を揃えて「ブルガリアは逆」といいます。EUの中でも女性の社会参加がもっとも進んでいる国の一つであるブルガリアでは、幼児教育環境が比較的良好であるとのことでした。他学部はよくわかりませんが、教育学部では教員も学生もほとんどが女性でした。ある学生の考察によると、教員は時間の融通が効きやすく子育てをする女性には魅力が大きいのでは、とのことです。日本では、中等・高等教育における女性教員の割合がOECD国の中で一番低く、また教員は一番忙しい、時間の融通が聞きにくい仕事の一つですよ、というと大変驚かれました。授業に参加してくださったコストヴァ教授は、本学に来学した際にお会いした松田学長が女性であることを紹介され、先進的であるという点を説明されるとともに、「優しい方だった」と話されていました。
その他、教育水準の上昇に職業の技術水準が追いつかず、雇用のミスマッチが起きている問題、高等教育を受けた人材が海外に流出してしまう問題、いわゆるBrain Drainに悩まされているとか、ブルガリアの教育事情について興味深い話を学生や先生方がいろいろと説明してくれました。講義半分、ディスカッション半分といった具合です。普段の福山大学での授業とは違う雰囲気の中で、しかも英語で授業ができ、また教員の方々や学生さんたちが盛り上げてくださったおかげで、大変思い出深い経験となりました。
予定の授業をすべて終え、「Certificate of Attendance(修了証明書)」をいただき、今回のErasmus+プログラムが終わりました。
今回のソフィア大学での講義をすべてコーディネートしてくださり、大変お世話になったシイカ・コストヴァ教授についてです。彼女は最近まで学部の要職に就いておられ、現在は国の教育行政にも関わる仕事をされており、大変お忙しい中で私の授業を見に来てくださり、またアドバイスをくださいました。到着時には空港までわざわざお迎えに来てくださり、また食事にもお誘いいただきました。
それからもう二方、エカテリーナ(Ekaterina Tomova)さんと、ダニエル(Daniel Polihronov)さんです。彼らは教育学部の博士課程に在籍する学生ですが、コストヴァ教授のアシスタントをされており、授業も受け持っています。こちらもお忙しい中、教室のアレンジや学外での手続きの付き添い、またソフィアの街の案内もしてくださいました。
私の授業を受けた学生さんたちも優しくて、講義の最初に配った抹茶のキットカットのお礼にと、最後の授業の終わりにブルガリアのお菓子をたくさんいただきました。
ブルガリアの方々の優しさに常に触れていた10日間でした。
この機会をくださり、またサポートしてくださった皆さん、本当にありがとうございました。
学長から一言:国際経済学科の学生たちが、国際の名に恥じず、どんどん外国に出掛けるようになりましたが、教員も学生の引率だけでなく、このように外国の大学で授業をするというのも、国際経済学科らしいすばらしい経験ですねッ!EUにも、ブルガリアのソフィア大学にも、シイカ・コストヴァ教授を初めとする先生方やサポートの方々にも、授業に参加した優しい学生の皆さんにも、心から感謝!!!