【心理学科】「ものづくり × 心理学」: ユニ・チャーム株式会社との共同研究を学術誌に発表!
ものづくりにも欠かせない!心理学の魅力をお伝えします。
こんにちは。心理学科の大杉です。突然ですが皆さん、ウェットティッシュって使いますか?私はしょっちゅう使います(自宅にも車にも研究室にも常備)!そんなウェットティッシュの画期的なお話について、今日は認知心理学研究室の宮﨑由樹准教授から紹介します。
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認知心理学研究室の宮﨑です。
日本人間工学会の学術誌「人間工学」の55巻4号に、福山大学・北海道大学・ユニ・チャーム株式会社の3者共同研究の成果を発表しました。
ウェットティッシュの取り出しやすさについて評価した研究です。
ウェットティッシュは、1970年代にアメリカで乳幼児用のおしりふきとして誕生した製品ですが、今では、机上の汚れの清掃やレジャー等の外出場面で手や口まわりの汚れを落とす際等、様々な状況や用途で広く活用されています。その市場は年々成長し、2018年の生産数量は800万個を超えています(日本衛生材料工業連合会のHPより)。
ウェットティッシュ製品は広く一般に使用されていますが、その使用感について不満の声を挙げる消費者も多いのです。特に多い不満は「取り出しづらさ」です。ティッシュが取り出し口にひっかかって引き出すことに苦労したことやティッシュを1枚引き出すと次のもう1枚が中に入り込んでしまい、取り出し口にティッシュを再度セットすることを強いられた経験は、多くの人にあるのではないでしょうか?
これまで、各メーカーはウェットティッシュ製品の取り出し口等の改良を行い、ティッシュの取り出しやすさを高める工夫を重ねてきました(ユニ・チャーム株式会社の取り組み例,下図参照)。このような改良が進む一方で、取り出しやすさを高めることが、その製品の使用感や後の製品選択にどのような心理的影響を及ぼすかについてはよく分かっていませんでした。
この研究では、ティッシュが取り出しにくい製品と取り出しやすい製品によるケチャップの清掃課題を行い、取り出しやすさを高めることが、その製品の使用感や後の製品選択に及ぼす影響を調べました。清掃後、実験の参加者はそれぞれの製品の取り出しやすさ、拭き取りやすさ、使用の楽しさ等について評価しました。
取り出しやすい製品による清掃の様子です↓
研究の結果、ウェットティッシュが取り出しやすい製品は、取り出しにくい製品に比べて使用が楽しく感じるほか、また使用したいと感じることが分かりました。
その他、中身のティッシュ素材はまったく同じにも関わらず、取り出しやすい製品の方が「取り出しやすい!」と強く感じた人は,拭きやすさ、拭き取り跡の綺麗さ、べたつかなさなど、拭きとりに関する機能も高く感じていたことが分かりました。
物事の知覚的な処理のカンタンさは知覚的流暢性と呼ばれます。知覚的流暢性の高い物事はおおむねポジティブに評価されることがこれまでの研究で知られています。「取り出しやすいウェットティッシュ製品」は「触覚的な処理がカンタンな製品」といえます。今回の結果は、ウェットティッシュの取り出しやすさという触覚的な流暢性の高まりを製品評価に帰属させたことによって生じたと考えられます。
なお、本研究では、取り出しやすいウェットティッシュ製品としてユニ・チャーム株式会社のシルコットを利用しました。
この研究を実施するにあたって、心理学科の濱田慶和さん(2017年度卒業生)、明石悠里さん(2年生)、山本美優さん(2年生)が協力してくれました。特に、濱田さんは自分自身の卒業研究と並行しながらこのプロジェクトに深く関わってくれました。実験環境の設定や準備など積極的に進めてくれ、非常に力になってくれました。彼の協力なしには発表できなかった研究です。
ユニ・チャーム株式会社との共同研究は、その他にも進行中です(過去の取り組みはこちら)。
「ものづくり」と「心理学」のコラボレーション、続報にご期待ください!
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ものづくりにおける製品の評価に、心理学がとても役立っているのが分かります。心理学科の学生もものづくりに関わることができるなんて、とても素敵ですよね!使いやすい商品、使っていて楽しい商品が心理学によって増えていくことは、本当に嬉しいことです。私も続報が楽しみです!
学長から一言:「心理学」というと、心のケアー的なことをまず思い浮かべる人が多いでしょうが、企業とのコラボでもいろいろ役立っているようですねッ!商品開発でも、発想が豊かになりそう!興味のある高校生の皆さん、ぜひ福山大学へ!