【人間文化学科】歴史学研究の一場面~オーストリア・ウィーンにて

【人間文化学科】歴史学研究の一場面~オーストリア・ウィーンにて

「資料調査」:人間文化学科の教員にとって、なくてはならない研究活動の一つです。

今年度から学長室ブログメンバーに復帰しました人間文化学科清水です。こんにちは。「資料調査」、ワクワクしますね。ただ、どのあたりが「ワクワク」なのか、当事者以外の目から見るとわかりにくかもしれません。国内外の様々な施設等に赴き資料を調べていくのですが、それだけではないですよ。色々なお楽しみもあるんです。そこで今回は、オーストリア・ウィーンでの調査について、村上講師による報告をお伝えします。

********************************

皆さんこんにちは。人間文化学部人間文化学科の村上です。歴史研究者と聞くと、何となく堅そうなイメージを抱きがちですが、実際にはどのような研究活動を行っているのでしょうか。そこで、今回は2019年3月に行った現地調査の一コマを書かせてもらいます。

私の専門分野は近代ハプスブルク(オーストリア)史です。これまでは、ボスニア・ヘルツェゴヴィナの統治政策を中心に研究を進めてきました。今回の調査では、従来の課題に加えて日本とハプスブルクの関係史、より具体的に言えば、第一次世界大戦の直接的な契機となったサライェヴォ事件で暗殺されたフランツ・フェルディナントの訪日(1893年)について調べてきました。

調査を行ったのは、音楽の都としてよく知られているオーストリアの首都ウィーンです。ウィーンでの調査は、主に①「王室・宮廷・国立文書館」(以下、国立文書館)②オーストリア国立図書館③ウィーン大学付属図書館で行います。国立文書館とはあまり聞きなれない施設ですが、簡単に言えば、昔の王室や外交に関する文書を納めており、ウィーンの中心部にあります。(以下の写真) 

今回は滞在が短いこともあり、あらかじめ調査したい資料を申し込んでいたため、初日から調査を始めることができました。最初に、担当官の方と面談したうえで利用者登録をしてもらい、利用者証を購入、それから調査開始です。ここでは、以下のような箱の中に、数百枚におよぶ書類の束が詰め込まれています。

残念ながら、最後まで見ても収穫がゼロのときも少なくありません。その中でたった1枚であっても、役にたつ書類を見つけたときの喜びは何物にも代えがたいです。今回は、フランツ・フェルディナントの訪日に際しての日本側の対応について、貴重な情報を集めることができたので幸運だったと思います。

2番目のオーストリア国立図書館は、元はハプスブルク家の宮殿だったところです。かつて、このバルコニーでヒトラーが演説したことでも知られています。国立図書館は、現在は年間使用券が30ユーロ(かつては10ユーロでした)かかりますが、日曜日も開放されているため、滞在期間がかぎられる研究者にとっては大変助かります。あらかじめネットで発注しておけば、1時間ほどで閲覧できるように準備してくれます。

国立図書館側から写すと、その先に見えるのはウィーン市の市役所です。一見すると教会と間違えてしまいそうな立派なゴシック建築です。

国立図書館の中には様々な読書室がありますが、特に貴重な手稿資料を見ることができる読書室は、私のお気に入りの場所です。利用者も比較的少なく、観光都市の喧騒から離れ、じっくり調査できることもありがたいです。

3番目のウィーン大学附属図書館については、主に歴史学部と東欧史研究所の図書館を使用します。歴史学部は、リンク通りに面する大学の本館内にあります。日本の大学では一般的に部外者が自由に立ち入ることは制限されますが、ウィーンでは部外者であっても基本的に自由に閲覧、複写できます。このような開放的な雰囲気は、日本にも是非見習ってもらいたいところです。また、書棚を歩いていると、自分が全く知りたかった文献に出会えることもあります。今回の調査成果も、ゆくゆくは授業内容にも反映させたいと考えています。

さて、滞在中はだいたい朝から夕方前あたりまで各所で資料調査や文献収集を行います。その後、時間のある時には街中のカフェに出かけます。ウィーン市街の散策やカフェでの時間は至福のひとときです。

もっとも私の場合は、授業の題材を得る機会でもあります。例えば、担当授業である「生活文化史」では現在、世界の町を通じて歴史を展望する試みを行っており、その中ではウィーンも取りあげているからです。日本とは異なる外国のカフェ文化を知ることは、その土地の歴史に触れる手段の一つです。将来、卒業論文の主題にカフェ文化を選んでくれるような受講者が出てくることを期待しています。。。私の希望はさておき、現地での教員の見聞を紹介するとともに、研究成果を授業内容に活用することは、大学ならではの学びではないでしょうか。今後も、現地での体験を受講生の皆さんに還元したいと考えています。

 

学長から一言:何だか歴史小説に出てきそうな、懐かしい雰囲気のカタカナの文字がたくさん出てきますが。。。次はぜひ卒論生をつれて研修旅行をしたいですねッ!

この記事をシェアする