【福山大学ブランディング研究】意義深き国際研究交流
韓国の国立木浦大学島嶼文化研究院よりBong-Yong KANG教授(研究院長)、Sun-Kee HONG教授、Jae-Eun KIM教授、Sung-Hyun PARK教授をお招きし、4月19日(金)~21日(日)にかけて、国際シンポジウム”しまなみと多島海”を開催すると共に、島嶼研究に関する研究・連携を議論しました。
こんにちは、学長室ブログメンバーに返り咲きました生物工学科の佐藤です。
昨年の12月に中越信和グリーンサイエンス研究センター客員教授と私が木浦大学を訪問し、福山大学ブランディング研究の紹介をさせていただきました(学長室ブログはこちら)。今回の交流は2回目となります。結論としては大変意義深く、また実りの多い国際研究交流となりました。
19日(金)の夜に福山駅に到着され、早速次の日に学長室を訪問するところから交流が始まりました。お土産には、海の生き物の絵が描かれた箸置きをいただきました(ブランディングメンバーも全員いただきました!)。海産資源の豊かな木浦ならではのお土産でした。
懇談後は、早速メインイベントのシンポジウムです。タイトルは「しなまみと多島海」。福山は瀬戸内海中央域に接し、近隣に島の集合した日本でも特異な場所にあります。島が多いことから、私たちはその多島海を「しまなみ」と呼んでいます。木浦の近隣にも同じように島が集合した多島海が見られ、その多島海はハングル語で「ダドへ」と言います。両地域及び両大学は同じ多島海を持ち、ソウルや東京といった国の中心部から離れた場所で、地域をいかに活性化するかという共通の課題に直面しています。その解決策を共有するというところに、この国際シンポジウムの意義がありました。司会は、中越信和グリーンサイエンス研究センター客員教授(元広島大学)です。冒頭には冨士副学長が挨拶を行いました。
さぁ、シンポジウムです。要旨集はこちらになります。最初はKang研究院長による講演で、世界で初めて「島の日」を作り、国民の休日となった背景と歴史的意義についての話をされました。日本語への翻訳はPark教授です。
次に、Hong教授による講演です。生物多様性でもなく、文化多様性でもなく、それらを統合し、そして伝統的な文化を合わせた「生物文化多様性」という概念のお話がありました。この概念を聞き、真っ先に本学の「瀬戸内の里山・里海学」が思い浮かび、総合大学が目指すべき方向性の一つが見えた気がしました。
木浦大学最後の講演は、Kim教授による韓国無人島の活用に関するお話でした。フィールド調査に基づき、どのように無人島を利活用していくかを島の特徴とともにカテゴリー化していくというお話でした。木浦大学の皆様の講演は福山大学にはない研究で、しかも、しまなみでも応用可能な、とても新鮮なご講演ばかりでした。
さて、休憩をはさみ、本学からも3名の演者が講演しました。最初は、海洋生物科学科の渡辺伸一准教授の講演で、オオミズナギドリのバイオロギング研究について動画を交えてダイナミックな講演がありました。忍者のように飛び回るオオミズナギドリの行動から海洋環境を観測するという話でした。
2つ目は、しまなみ沿岸生態系の持続可能性に関するもので(生物工学科 佐藤淳)、沿岸域で豊かな生物多様性を持つ藻場や干潟を維持するためには、遺伝的多様性に基づく保全単位の設定と森海連環の実証が重要であることを説明しました。特に、森の野ネズミを対象にDNAでウンチを分析して生態系を探る手法を紹介しました。
最後は、海洋生物科学科の有瀧真人教授(因島:福山大学内海生物資源研究所長)の講演があり、養殖技術を工夫し、如何に大きなシロギスを生産するかという話がありました。大きいだけではなく、寿司ネタにするとこれまでにない触感と味が出るとのことです。暖かい沖縄での養殖もうまくいき始めており、研究に広がりを見せています。
最後に、パネルディスカッションで議論を行い、シンポジウムを終えました。全学及び他大学より計86人のお客様に来ていただきましたが、大変有意義なシンポジウムになったと思います。お越しいただきました皆様には感謝申し上げます。学生からのKang研究院長への質問があったのも良かったと思いますし、会場設営にご協力いただきました生物工学科動物細胞工学研究室の4年生にも感謝いたします。
シンポジウム後は福山大学内のキャンパスを散歩し、33号館のグリーンサイエンス研究センターでは質量分析器や次世代シークエンサーを見学いただき、そして夜は懇親会でさらに島の研究について議論を深めました。本学の韓国出身留学生も交え、懇親会は大いに盛り上がりました。
一夜明け、午前中に因島の内海生物資源研究所(マリンバイオセンター)を訪問し、有瀧教授が養殖施設の紹介、そして水上講師が水族館の紹介を行いました。Kang研究院長は「とても印象的な施設だった」とおっしゃっていました。
話せば話すほど、木浦大学と福山大学には共通の課題があることが見えてきます。今後の連携により、学際的な視点から島の研究が進むことを祈っています。しまなみが何を教えてくれるか、新しい視点の発掘のために福山大学の役割は大きそうです。このしまなみの根元に総合大学があるのは偶然ではないはず。世界に注目されているSetouchi(National geographic、New York Times)。ここでこれからどんな新しいものやことが生まれるのでしょう。今後が楽しみです。
学長から一言:木浦大学の皆様、ありがとうございました。。。ワクワク感に満ちたシンポジウムになったようで、今後の「瀬戸内の里山・里海学」の新しい推進力の一つになりそうな気配ですねッ!交流の発展を期待していま~す!!!