【国際経済学科】ヨーロッパ・トップ10研修報告!Part.2
国際経済学科のトップ10(テン)カリキュラムによるヨーロッパ研修が、9月19日(水)に無事終了し、帰国しました。前回のレポートに引き続き、萩野教授から研修後半の様子が届いていますので、学長室ブログ担当の藤本が報告します!
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国際経済学科のトップ10・欧州研修は、ハンガリーとドイツに場所を移し、第二フェーズの課題に取り組んでいます。その課題とは、欧州におけるインダストリー4.0について、学修することです。
ブダペスト工科大学「インダトリー4.0研究センター」を率いるラツィオ・コバック教授によると、インダストリー4.0とは生産のデジタル化・AI化のことです。インダストリー2.0は電気を使い、同じものを大量に生産することを可能としたのに対し、インダストリー4.0はAIを使い、違うものを大量に生産することを可能にすることです。インダストリー3.0は生産の自動化を可能としましたが、インダストリー4.0はその計画を物理的なものを動かさないで、デジタルでビッグデータを使いながらシミュレーションすることを可能にする、とのことでした。そうした説明を受けた後、同センターの実験場で生産のデジタル化・AI化を見せてもらいました。中でも印象的だったのは、ヴァーチャルリアリティーを用いた仮想工場です。下の写真は、学生はゲームをしているのではなく、バーチャル空間で新工場の中に立ち、新たな生産プロセスについてシミュレーションを行っているのです。これは「製造現場」というもののイメージを変えるものではないでしょうか。
ハンガリーに根を張って頑張る広島県の企業、東洋シートヨーロッパ、マジャール東洋シート、さらにはその供給先であるマジャールスズキを訪問し、この点について意見交換をしました。インダストリー4.0については、これまでのロボット化にAIが加わるイメージですが、まずは人が行っている検査を機械化することで始まり、徐々に組立工程に入っていきます。すでに、設計・企画作業のデジタル化が進み、コンピュータ上の3D画面でシミュレーションする形で計画が進められていますが、そうしたプロセスが生産過程に入っている、とのことでした。「インダストリー4.0研究センター」で学生が経験したことは、まさにそういうことだったわけです。
ドイツに移ってからは、シュツットガルトに本社があるメルセデスベンツやポルシェで、その一端を垣間見ました。メスセデスベンツのシンデルフィンゲン工場では、組立工程を除き、殆どのプロセスが自動化された最先端の生産プロセスを見ましたが、インダストリー4.0への対応として、現在人とロボットが共同して組立を行う新工場を建設中とのことで、その骨組みだけを見てきました。数年後、同工場の新たな生産プロセスを見てみたいものです。
学生と話をすると、製造業というものについて、あまりポジティブな回答が帰ってきません。曰く、スーツを着てピカピカしたところで働きたいとか。その気持ちも分からないではないですが、モノづくりがインテリジェンスを要する取り組みであること、そして本学の学生にとって幸運なことに、備後地域にはそうした取り組みを行う優良企業が多いことを説いています。今回のインダストリー4.0の学修経験や海外で活躍する地元企業の方々との対話が、モノづくりに対する学生の認識を改める機会になることを期待しています。
そして、ヨーロッパ研修はドイツのフランクフルトで最後の締めを行いました。フランクフルトは欧州の金融の中心で、欧州統一通貨を発行する欧州中央銀行(ECB)の本部があります。
中心テーマは「欧州の未来」です。欧州では、欧州連合(EU)や経済・通貨統合が進められていますが、中東欧諸国を中心に反EUの動きがみられますし、英国はBREXIT と呼ばれる、EU離脱に向けた交渉を進めています。
日銀フランクフルト事務所の足立所長によると、欧州経済は順調に推移しており、欧州中央銀行は、金融の量的金融緩和政策である資産買入プログラムを本年末までに終える計画ですが、今後のリスクとしては米国通商政策の余波、BREXITの影響、EUにおける政治リスクが考えられるとのことでした。米国通商政策の余波については、米欧亜に形成されたバリューチェーンが複雑に絡み合う中で、米国の保護主義政策や中国の報復措置が、これにどのような影響を与えるか見通し難いというのが現状です。
BREXITの影響については、仮にEUと英国の間で協定が成立せずに英国がEUを脱退するハードエグジットとなった場合には、英国経済の下振れと欧州経済の悪影響が考えられます。BREXITへの日本企業の対応については、金融機関で大陸欧州に拠点を置く動きが見られるものの、製造業では静観しているというのが現状だそうですが、フランクフルトに欧州拠点を置こうとしている三井住友銀行のフランクフルト事務所を訪問して、その背景等を聞いてみました。同事務所の西澤部長によると、金融ビジネスを行っていくうえで、ドイツの経済力が魅力的だったことやドイツの規制当局がしっかりしており、安心感があることが理由とのことでした。ちなみに、三井住友銀行の前身である住友銀行について、尾道支店が国内最初の支店だったってご存じでしたか?そんなことで、ローカルとグローバルを結びつけるグローカルな訪問調査となりました。
政治リスクについては、移民の増加を背景に一部の国でポピュリズムの動きが拡大しており、これが企業や消費者の心理を悪化させ、実体経済に悪影響を及ぼす可能性があります。昨年来、オーストリア、ハンガリー、イタリアで右派政党が支持を伸ばしました。この点、ハンガリーでは本年の4月に成立したフィデス政権が反EU路線を標榜しています。この動きは2015年、トルコを経由してシリア難民がハンガリーになだれ込む中、ハンガリー政府は国境に柵を設ける等、移民流入を防ぐ政策をとったことに始まります。JETROブダペスト事務所の本田所長によれば、ハンガリーはEU補助金によるインフラ整備や観光開発を進めてきましたが、反EU路線もあって、そうした補助金が先細る見通しであり、中国の一帯一路政策への期待が高まっているとのことです。
最後に、本田所長に授けていただいた大変面白いメッセージを紹介しましょう。日本のドラマのタイトルにもなった「逃げるは恥だが役に立つ」という表現は、もともとハンガリー語の格言で、自分の戦う場所を選べ、というメッセージだそうです。確かに、ハンガリーでは多くの国と国境を接するため、生き延びていくために外交的な賢さが重要なのでしょう。この点、外国と国境を接していない日本では、なかなか実感できない感覚ではないでしょうか。日本で育った学生たちは、グローバル化がさらに進んでいく中で、海外から学ぶべきこと――外国語ということではなく、生き方について――が多いのではないかと思います。今回の欧州トップテン研修が、そうした学びのきっかけになれば良いと思います。
トップ10カリキュラムの海外研修期間中、参加学生は萩野教授から訪問先に関するさまざまな質問や課題を提示され、ホテルに帰ってからもプレゼン資料を作成することもあるそうです。成果は、三蔵祭でも展示されました。学生はそれぞれ相当の力をつけて帰ってきますし、その後の学修への取り組み方もアクティブに変わります。次回のトップ10研修も楽しみです。
学長から一言:トップ10カリキュラムは、国際経済学科生のための特別プログラムです。。。参加した学生の皆さんは、事前学修と研修中の学習だけでなく、事後学修もしっかり行って、大きなグローカル人間に育ってくださいねッ!!!期待していま~す!!!指導の萩野教授もお疲れさま!