【心理学科】 県立歴史博物館の学芸員との共同研究を知覚心理学の国際誌に発表!
皆さんは縦縞と横縞、どちらの服がお好きですか?縞模様が持つ視覚的効果については、実は200年以上も前から検討されていたそうです。
本日は、広島県立歴史博物館の学芸員との共同で行われた縞模様の歴史的記述に関する研究成果について、心理学科の宮崎由樹准教授からの報告をお届けします(投稿は学長室ブログメンバーの大杉です)。
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心理学科の宮崎です。
ふくやま草戸千軒ミュージアム(広島県立歴史博物館)の学芸員の石橋健太郎氏との共同研究が、知覚心理学の国際誌 『i-Perception』 に掲載されました。論文のタイトルは 「Descriptions of a common belief in an 1813 Japanese beauty handbook regarding the influence of striped clothing on perceived body shape (1813年に刊行された日本の美容指南書における服の縞模様と体型認知に関する通説の記述)」 です。
<Miyazaki, Y & Ishibashi, K. (2022). Descriptions of a common belief in an 1813 Japanese beauty handbook regarding the influence of striped clothing on perceived body shape. i-Perception, 13(5), 1–5. >
「横縞の服を着ている人はワイドで背が低く、縦縞の服を着ている人はスリムで背が高く見える。」こうした「服の縞柄と体型認知に関する通説(縞柄通説)」を一度は耳にしたことがあると思います。この縞柄通説は、垂直の縞模様の正方形はワイドに、水平の縞模様の正方形はスリムに見えるというヘルムホルツの正方形錯視と矛盾するため、知覚心理学を専門とする研究者の注目を古くから集めてきました。
実のところ、この縞柄通説に関しては、それを支持する研究・しない研究が存在し、さまざまな議論があります。こうした一貫しない研究の知見が存在するにも関わらず、ファッション界を中心に根強く支持されてきました。この通説は、一体いつ頃から存在しているのでしょうか?この論文は、今から200年以上も前に、縞柄通説が日本に存在していたことを報告したものです。
<右上図は 「Helmholtz Illusion Makes you Look Fit Only When you are Already Fit, But not for Everyone, Ashida et al., 2013, i-Perception』」より改変して転載(CC BY 3.0)。© 2013 SAGE Publications Ltd.>
縞柄通説に関する記述は、1813年に刊行された『都風俗化粧傳』において見つかりました(佐山・速水, 1813/1982)。この資料は、江戸時代の美容家である佐山半七丸、絵師の速水春暁斎によって書かれた日本で初めての総合的な美容指南書と言われています。縞柄通説に関する記述は、下巻の6章9–12ページにあります。
これらのページには、背を高く見せる方法および低く見せる方法が記載されています。具体的には、「背の低きを高く見する伝(低身長を高く見せる方法)」と題したセクションでは「衣類の仕立て方は、少し身幅を狭く仕立てて、模様は長く伸びた草花などを付けるとよい。縞であれば縦縞か、縦の筋が目立つ縞が良い。横が目立つ縞模様も横に広がった模様も良くない。」と述べられています。同様に、「背の高きを低く見する伝(高身長を低く人並みに見せる方法)」では、背を低く見せるには横縞が有効で、縦縞は避けた方が良いと書かれています。
<『都風俗化粧傳』より改変して転載(CC BY-SA 4.0)。国文学研究資料館所蔵。>
福山大学心理学科と広島県立歴史博物館の博学連携「草戸千軒お化け屋敷」に関しては、すでにお伝えしているところですが、このような学術的な連携も行われています。今夏には、博物館内で実験を行った学生もいます。こうした様々な連携の機会をいただき、県立歴史博物館の佐藤館長、学芸員ならびに職員の皆さまには大変感謝しております。今後も広島県立歴史博物館との多方面での博学連携にご注目ください!
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200年以上も前から縞模様に関する通説が存在するとは驚きました!「美容指南書」も存在するとは、今も昔も、ファッションや美容は多くの人の関心の的であったのだと実感します。なぜ正方形錯視とは逆の効果が通説として存在するのか、今後の研究の進展も楽しみです。
学長から一言:広島県立歴史博物館の石橋健太郎学芸員には「博物館資料論」等の非常勤講師としてもお世話になっていますが、今般は本学心理学科の宮崎准教授との共同研究の成果が心理学の国際誌に掲載されたとのこと、おめでとうございます。衣装の縦縞・横縞が与える視覚的影響が江戸時代の書物にすでに述べられていたとは、新鮮な驚きであり、それをよくぞ発見されました。素晴らしいの一言に尽きます。