【心理学科】「眠れない」は危険信号:睡眠の問題についての研究紹介(第2弾)
眠りに関する悩みを抱えた人は多いと思いますが、中でも「不眠」は、健やかな生活における宿敵です。
本日は不眠と日中のパフォーマンスとの関連を調べた研究について、心理学科の高野裕太助手からの報告をお届けします(投稿は学長室ブログメンバーの大杉です)。
***********************
心理学科の高野です。
ベッドに入っても寝付けない、途中で起きる、朝目が覚めるのが早いことを不眠といいます。不眠はさまざまな「こころの問題」や元気に活動することを妨げることと密接に関係していると言われています。
この度、私が行った「不眠が悪化するほどに、パフォーマンスの効率が下がっていくことを調べた研究」が、睡眠研究の国際学術雑誌「Journal of Sleep Research」に掲載されました。
論文のタイトルは「Association between insomnia severity and presenteeism among Japanese daytime workers(不眠の重症度と日中のパフォーマンスの関連)」です。
新型コロナウイルス感染症にも「軽症~重症」という分類があり、重症度に応じて入院や自宅待機となることは皆さんも良くご存じかと思います。不眠も同様に「軽症~重症」という分類があり、症状の度合いや困っている方の要望に応じて治療の提供方法を変えることが必要だと言われています。しかし、今までの研究では不眠の重症度と日中のパフォーマンスの関係に焦点を当てた研究はほとんどありませんでした。
私たちの研究の結果から、不眠の軽症の人たちと比較して、中等症もしくは重症の人たちの方が日中のパフォーマンスの効率が低下していることがわかりました。この点は、予想通りの結果です。一方で、予測と異なり、中等症と重症の人たちを比較したときに、両者の日中のパフォーマンスの効率に違いがあるという結果は得られませんでした。この点については、現時点でハッキリと結論づけることはできませんが、眠れないことに対する心配などの心理的要因が関連しているかもしれないと考察しています。
この考察が正しかったのかどうかは別の研究で検証し、現在、学術誌で審査されています。掲載されましたら、また皆さんと共有したいと思います。
今回の研究では、福山大学の支援を受けて心理学科が契約しているqualtricsを使用しました。研究への理解と支援をいただいていることについて、この場を借りて感謝申し上げます。
本研究の背景には「なぜ、不眠の状態が悪くなるごとに治療のための時間もコストもかかるのに、日中のパォーマンスの変化が分かっていないのか?臨床心理学は症状だけを診ているのではなく、生活全般をみているのではなかったのだろうか?」という疑問がありました。皆さんにも、「なんとなくそうだろう」「学校の先生がそう言った」ということを根拠に、なんとなく理解した気になっていることはありませんか?疑問に思ったことを自分で解決していくことは、大変なことが多いですが、結構楽しいことだと思います。
皆さんも、福山大学心理学科の4年間で、疑問に思ったことを自分の力で解決していく楽しさを学んでみるのはいかがでしょうか?
***********************
不眠だと日中のパフォーマンスが下がるということは直感的にはわかる気がしていたのですが、科学的に証明されてはいなかったのですね。科学は1つ1つの研究の積み重ねなのだなと実感します。皆さんもぜひ、日常に潜むたくさんの疑問に目を向けてみてくださいね!
学長から一言:日頃感じていても、そのまま素通りしていることを、きちんと調べないと居られないのが研究者魂。不眠の度合いとパフォーマンスの善し悪しの関係を科学的に考察した研究成果がその分野の国際ジャーナルに掲載された高野裕太助手、おめでとう! 疑問点を明らかにするのに使える道具、オンライン調査・実験ツールが身近に備わっていたのも良かったですね。斬新な発想で次々と研究実績をあげて下さい。応援しています。