【生物工学科】ラオス醸造研修同窓会を開催!
コロナ禍前に福山大学ラオス醸造研修に参加した学生と教員、そして在ラオスのラム酒製造会社LAODIの醸造責任者である井上育三氏が集まり同窓会が開かれました! その模様を生物工学科学科長である岩本教授より報告をいただきましたので、学長室ブログメンバーでワイン醸造所長の吉﨑が投稿します。
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このゴールデンウィークの谷間、生物工学科のラオス醸造研修参加者が集い、同窓会を開催しました。この同窓会は、福山大学ラオス醸造研修所があるラム酒製造会社LAODI醸造責任者の井上育三氏が、2年半ぶりに帰国されたのを機に開いたものです。ちなみに、井上氏には生物工学科の非常勤講師をお務めいただいています。
ラオスの首都ビエンチャン近郊のラム酒製造会社LAODIの壁に掛かる本学ラオス醸造研修所の看板
ラオス醸造研修2019
新型コロナウイルス感染症の世界的な蔓延が始まる直前の2019年12月、生物工学科では学生14名、教員2名が参加するラオス醸造研修を行いました。今から思えば、コロナ前夜の際どいタイミングでの開催でした。このとき、醸造研修に参加した学生の半数以上はすでに卒業し、今回同窓会に参加した学生のほとんどは11年次に参加した人です(それが今では4年生)。 LAODIの井上氏も新型コロナウイルス感染症の蔓延によりラオスから帰国できなくなり、このままラオスに骨を埋めようかと思っていたそうです。
2019年12月に行われたラオス醸造研修の集合写真です。LAODIの工場前にて。左端が井上氏。
LAODIの井上育三氏
井上氏は、もともと福山大学にも商品を納める理化機器会社の敏腕セールスマンで(口がたつ)、久しぶりの帰国で日本語に飢えていたこともあり、ほとんど一人で話をされていました。話はラオスから見た主に東南アジアの政治・経済についてのリアルな話題から始まりました。日本はウクライナ難民は受け入れるのに、なぜ同じアジアの同朋であるミャンマー難民は受け入れないのか内心忸怩たる思いとのことでした。また、日本のマスコミは、ラオスは中国の債務の罠に陥っているといった画一的な報道しかしないが、ラオスは中国とベトナムから巧みに援助を引き出すしたたかな外交を展開しており、一方からだけ見ていては物事を見誤るとのことでした。
井上育三氏
次に、ラオスにおける新型コロナウイルス感染症の状況についてです。ラオスは出入国を制限して(鎖国?)当初新型コロナウイルス感染症の封じ込めに成功したが、メコン川を渡って不法に入国した人から一挙に感染が広がり、国中がパニックになったとのことです。
メコン川をバックにポーズを取る学生と井上氏(中央)。何とか泳いで渡れそう。
世界の最貧国の1つであるラオスは、当初ワクチンが手に入らなかったが、こちらもしたたかな外交の成果か、最初はロシアからスプートニクを、次は中国からシノバックを、その次はイギリスからアストラゼネカを、そして最後はアメリカからファイザー製のワクチンを手に入れ、国民に無償でワクチンが接種できたことなどを紹介されました。
一方、外貨収入の多くを観光に頼るラオスは、経済が疲弊したものの日本のような休業補償を賄う余裕は政府になく、「都会にいても仕事はないので、田舎に帰ってなんとか食いつなごう」というのが政府の方針だったそうです。LAODIもお酒が売れず、十分な給料が払えないので「会社がこういう状態だから辞めたい人は辞めてもらってもいいよ。」と従業員に正直に話したところ、誰一人辞める人はいなかったそうです。
LAODIで働くラオスの方々(ほとんどが若い女性)と学生との交流風景
その代わり、ラム酒の原料であるさとうきび畑の一部を米や野菜畑に転用し、みんなで食いつないでいるとのことです。実にたくましいですね。
LAODIのサトウキビ畑での作業。今ではここで米や野菜を作っているかも?
ラオスにいったい何があるというんですか?
ここで、学生に「なぜラオス醸造研修に参加しようと思ったのか?」と一人ひとりに思いを語ってもらいました。井上氏からは「どんな動機でも良いので実際にラオスに来て、ラオスの人々がどんな生活をして、どんなことを考えているのか。悲しみも喜びも恋も失恋もする同じ人間だということを直に感じてほしい。」
※ちなみに小見出しの『ラオスにいったい何があるというんですか?』は、村上春樹氏の紀行文集のタイトルです。ぜひお読みください。
「ラオスに限らずベトナムほか世界の若者は果敢に見知らぬ土地(外国)に出ていき、苦労してもなんとか生きていこうという熱量があるが、その熱量は今の日本の若い世代にあるか?殻に閉じこもっていないで、マインドをオープンにし、地面に這いつくばってもたくましく生きていこう。困難に直面しても人のせいにせず、人の悪口を言わず、自分の力で乗り切ろうという気概がないと、この多様性に溢れた世界では生きていけない。そういう感覚をぜひラオスに来て体験し、心に刻んで人生を生きてほしい。ラオスの人たちは、ちょっと控えめでおとなしいところが日本人に似ています。ラオス人は日本や日本人が大好きなんです。」との熱いメッセージで同窓会を締め括りました。
井上氏の話に「うん、うん」と頷く研修修了生
最後に
学生は、井上氏の言葉に一つひとつ「うん、うん」と頷いていました。異国で事業を立ち上げ、苦労を重ねた井上氏と、それを現地で見てきた学生だからこそ伝わる言葉です。ということで、今年は地面に這いつくばっても、とまでは言いませんが、ぜひ福山大学ラオス醸造研修を復活させよう!と決意を新たにした同窓会でした。
動画も
井上氏の話のごく一部を動画にしましたのでご覧ください。約5分の動画です。
学長から一言:生物工学科が以前から付き合いのあった、本学非常勤講師でもある井上育三氏の協力を得て、同氏の勤務先である在ラオスのラム酒製造会社LAODI内に設けた福山大学ラオス醸造研修所。その研修所を拠点にしてコロナ禍前には現地実習を行い、学生の学びや成長に多大な成果を上げていたものです。コロナ禍で頓挫していますが、一日も早い復活を心から願っています。