【生物工学科】バイオ企業の最前線で活躍する先輩の講義
人の遺伝情報全てがはじめて解読されたいわゆる「ヒトゲノムプロジェクト」に関する論文が2004年に公表されました。その分析にかかった費用はなんと30億米ドル。とても一人の研究者の手に負えない額です。しかし今やヒトゲノムが1000ドル以下で解読できる時代となりました。このブレイクスルーを引き起こしたのは、2005年から2007年にかけて開発された次世代シークエンサーです。
12月16日(木)のバイオ経済・企業論(3年次)では、次世代シークエンサーのシェアNO.1を誇るイルミナ株式会社で営業部長を務める井上忠雄さんにゲノム分野の最前線とバイオ分野で働くことの意義について講義していただきました。これから就職活動を始める3年生にとって刺激的な講義になりました。このことについて、生物工学科の佐藤が報告します。
井上さんは生物工学科の卒業生で、2006年に博士の学位を取得されました。私(佐藤)が本学に赴任したとき、井上さんは博士課程の1年生で在籍しており、福山大学には優秀な学生がいるなぁと感じたことを覚えています。「何のために生物工学を学んでいますか?」と、井上さんは学生たちに今ここにいる意義を問いかけます?生物工学(バイオテクノロジー)という分野はとても幅広く、自分の興味も定まらない中、すぐには答えは出ません。しかし考えることは大切です。井上さんの解説で、生物工学が大変有望な学問であることが分かりました。3年生は生物工学科で学ぶ意義の一端が見えたのではないかと思います。
井上さんは学生時代に「これからは英語が必要だ」と感じ、カナダに留学をしたり、4年次の卒業研究発表を英語で行うなど、英語の習得に力を注ぎました。それは今の外資系企業で働く上で大変役に立っているようです。井上さんはこれまでにバイオ企業を転々としてきましたが、その転職における心意気が面白い。どれもポジティブなのです。常に自分を客観視して、自分が成し遂げてきたこと、自分に足りないもの、将来の自分になければならないものを考えて、自分を高めながら、現在に至ったようです。たくましい先輩です。3年生の皆さんにとって自分を考える良い機会になったのではないかと思います。井上さん、刺激的な講義を本当にありがとうございました。
イルミナ社の次世代シークエンサーMiSeqは、未来創造館で活躍中です。動物の食性を分析するなど環境DNA分野で成果が出始めています。今月も4年生や大学院生が卒業論文や修士論文のデータ取得のためにたくさん使いました。MiSeqは、2018年に本学に導入されましたが、もはやなくてはならない存在になりました。このような最新のバイオ技術を学べる大学は多くはありません。そしてそのゲノム解析技術は今、社会に求められています。興味のある高校生の皆さん、一緒にゲノムを解析してみましょう。
学長から一言:本学の大学院工学研究科(生命系)の博士課程で博士号を取得した先輩による講義は、きっと学生の皆さんにとって、将来ゲノム分野やバイオ分野の研究開発で活躍することが、努力次第で決して手の届かない事柄でないと感じられたことでしょう。さあ、井上忠雄さんに続くのは誰でしょう。次世代シークエンサーのような高度な機器が学部レベルでも簡単に使える優れた環境を最大限に活用し、大いに力量をつけて下さい。後輩たちに貴重な刺激を与えて下さった井上さんに心から感謝したいと思います。