【税務会計学科】簿記検定でネット試験合格者が続々誕生!
令和2(2020)年12月、日商簿記検定試験に新たな試験方法が導入されました。試験センター等のコンピュータで受験する『ネット試験』です。経済学部税務会計学科でも合格者が続々誕生している様子について、税務会計学科の関下が報告します。
簿記検定試験は、新型コロナウイルス感染症の蔓延の影響を大きく受けることとなりました。特に、昨年の6月は日商簿記検定試験開始以降、初めて試験中止となりました。昨年11月の第156回簿記検定試験では、試験自体は再開されたものの、感染防止のためソーシャル・ディスタンシングのルールに従わなければならないことから、受験者数が大幅に抑制されることとなりました。
今年2月には、福山商工会議所からの依頼もあり、集団申込による本学受験者は本学会場にて受験することとし、福山商工会議所受験会場の混雑緩和に一役買ったところです。また、6月にも本学の教室を会場として開催しましたが、受験生にも概ね好意的に受け止められており、この体制が定着しつつあります。
一方で、日本商工会議所は従来から試験形態の多様化を模索しており、新型コロナウイルス感染症が契機となって、昨年8月に簿記2級・3級について「ネット試験」導入の予定が示され、12月には導入に至りました。
ネット試験の特徴としては、①受験会場に空きがあれば、いつでも受験可能、②問題プールから一人一人異なる問題が出題される、③試験時間が短縮(従前の120分→3級は60分、2級は90分)、④すぐに結果が分かる(当日、結果公表。従来は受験から2週間程度で合格発表)ということが挙げられます。
ネット試験で受験環境が良くなっていることを指摘しておきたいと思います。「いつでも受験可能」は、年3回の統一試験を待たずに受験できるので、自分の仕上がり具合に併せて受験が可能です。また、統一試験で惜しくも不合格になっても、その後ひと月の間に再チャレンジが可能です。「すぐに結果が分かる」ことも、従前の統一試験のように合否発表まで待たされることがなく、受験のインセンティブを高める要素になります。また、たとえ不合格であっても、再チャレンジに向けての始動が早まります。
教員・指導者から見たメリットは、出題される問題の難易度が平準化されているため、合格水準に合わせた指導にムラが生じないということです。統一試験では、試験ごとに問題の難易度が上下し、そのことが合格率にも大きく影響を与えていました。また、予想問題に過度に頼ったり、「山を張る」などしたりすることが多くありました。ネット試験では、問題プールからランダムに出題されるため範囲全体の論点をくまなく学習する必要があり、正攻法の学習に取り組むことを推奨するものとなっています。この傾向は、ネット試験2・3級の合格率を見ると、ともに50%に近い数字が出ていることにも現れています。
表1:ネット試験2級の合格率
期 間 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
2020年12月~2021年3月 | 29,043名 | 13,525名 | 46.6% |
2021年4月~6月 | 20,368名 | 9,132名 | 44.8% |
累計 | 49,411名 | 22,657名 | 45.9% |
表2:ネット試験3級の合格率
期 間 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
2020年12月~2021年3月 | 58,700名 | 24,043名 | 41.0% |
2021年4月~6月 | 37,362名 | 17,324名 | 46.4% |
累計 | 96,062名 | 41,367名 | 43.1% |
出典:日本商工会議所HP
TACなどの資格予備校が提供するネット試験用のプログラムなどがあり、徐々に新形式の簿記検定に向けた対策も出ていますが、現状では問題集の数が少なく、今後の充実を待ちたいと思います。
いち早くネット受験して合格した経済学部のKさん(ネットで3級合格、第158回検定で2級合格)の合格体験記について、ベストプラクティスの共有のため、以下に示したいと思います。
<Kさんのネット試験合格体験記>
私は、今回ネット試験を受けてきました。きっかけは、昨年11月の第156回試験で2級に合格できず、2月の試験で併願受験できない恐れがあったからでした。
ネット試験の申込から前日までの流れは次のとおりです。申込は、商工会議所の簿記ネット試験のホームページから自分が受験したい級・日付・時間・場所を選びます。福山からであれば、広島駅前のテストセンターが一番近いと思います(当時)。申込を行うと申込完了メールが届き、コンビニで受験料の支払いをします。
前日までに、商工会議所のホームページに記載されているネット模擬試験を行うことをおすすめします。結果から言うと、本試験と非常に近い問題が出題されたので、必ず取り組んでおくべきだと思います。
また、試験当日については次のとおりです。試験当日は、テストセンターで受付を行うと電卓以外はロッカーに入れます(広島テストセンターでは筆記用具は必要ありませんでしたが、会場によっては異なる可能性があるので、一応持参しておく必要があります)。係員の指示に従って部屋に着くと、ボールペンとA4の白紙2枚が渡されます。白紙は足りなくなったらパソコンの隣にある呼び出しボタンを押すと追加がもらえるので、統一試験に比べると利点だと感じました。試験開始のタイミングは、自分がクリックすることでスタートするので、自分のタイミングで始めることができます。
受験した印象としては、メリットとして結果がすぐわかること、いつでも受験できることなどがあると思います。また、デメリットとして試験用紙が無いので書き込みができない、間違えた箇所が分からないなどがあると思います。
個人的な感想としては、問題の難易度も易しく感じたので、受験をおすすめしたいと思います。また、いつでも何度でも受験が可能なので、就活までに資格が欲しい人などには最大のメリットではないかと思います。
以上のKさんの合格体験記は、上手く試験形態を活用することで効率的に資格取得できることの証左と思われます。学生諸君には、「かしこく」こういった手法を使いこなしていただきたいと思います。また、そのことを講義・簿記講座などを通じて伝えたいと思います。
そんなことを言っていたら、また税務会計学科の3年生から2級合格を知らせるLINEが来ました(ホントの話です)。
<追記>
7月28日からは、福山でも簿記検定(2・3級)のネット受験が可能になりました。福山商工会議所パソコン教室(☎084-982-8739)が窓口となり、実施しています。学生諸君の積極的な受験を願っています。
学長から一言:コロナ禍がもたらした「怪我の功名」というのか、簿記検定試験のネット受験は学生の皆さんにとっては好ましい方向に進んでいるようですね。個々の受験生に合わせて、別々の問題を瞬時に提示するとは、一体どれほど多くの問題をプールしたり、その組み合わせを準備すれば良いのだろうと、実態を想像するしかない者には驚異に感じられました。しかし、当然ながら公平性、公正性は担保された上での検定試験ですから、結果として従来の方式よりも多くの各級合格者が生まれることは実に好ましい。この調子で、税務会計学科はもとより、経済学部に所属するより多くの学生諸君が卒業までに資格を身につけてくれることを期待しています。