【人間科学研究科】大学院2年生の修士論文中間発表会をハイブリッド形式で開催!
コロナ禍の下での研究の遂行は、ヒトを扱う心理学にとってとても大変です。でもそんな状況に負けず、心理学科および人間科学研究科では、様々な工夫のもとに研究が進められています!
本日は、人間科学研究科で先日行われた修士論文中間発表会の様子について、認知心理学研究室の宮崎由樹准教授からの報告をお届けします(学長室ブログメンバーの大杉が投稿します)。
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心理学科の宮崎です。9月16日(木)に、大学院人間科学研究科の修士論文中間発表会を開催しました。教員、大学院生、次年度の大学院進学が内定している4年生および進学を希望する学部生が発表会に参加し、盛況な会となりました!
今回の中間発表会は、対面と遠隔を併用したハイブリッド形式で行いました。手持ちの機器やZoomを有効活用しながら以下の環境を整え、対面でも遠隔でも発表会に参加できるように工夫しました。また、発表会の様子をZoomで録音録画し、福山大学の学修マネジメントシステム「Cerezo」へその動画をアップロードすることで、発表会後に復習できる環境もつくりました。
<もっとスマートな方法があると思います・・・。詳しい方がいらっしゃったら教えてください。>
発表会では、大学院2年生の5名がこれまで実施した研究の中間報告を行いました。
最初の発表者は岡﨑麻依さん(広島県立大門高等学校出身)で、「SCITを用いた模擬テロ実行犯メンバーの検出—P300を指標として—」 というタイトルでの発表でした。
<会場に岡﨑さんの姿がないのはオンラインでの発表だったからです。>
岡﨑さんは「島根県警察本部刑事部科学捜査研究所」に勤めながら、修士論文に取り組んでいます。その関係で、今回はオンラインで発表および質疑応答を行いました。また、岡﨑さんは、テロ実行犯検出の実務応用を見据えたポリグラフ検査の研究について発表しました。コロナ禍で脳波を計測する対面実験はなかなか実施しづらい状況にも関わらず、30名の実験参加者のデータを収集するなど、意欲的に研究に取り組まれているようです(よろしければ、こちらの記事もご覧ください)。
2人目の発表者の岡本恵里奈さん(如水館高等学校出身)は、「抑うつ的反すうとポジティブ反すうが抑うつに与える影響」というタイトルでの発表でした。
岡本さんはメンタルヘルス・マネジメントに関心を持っており、特に抑うつの持続や重症化に関わる要因について興味があるそうです。発表では、スキーマ(いままでの体験等から形成される信念や態度)や反すう(物事を何度も繰り返し考え続けること)と抑うつ症状の関係についての仮説を丁寧に説明してくれました。
3人目の発表者の皿海ひかるさん(広島県立東高等学校出身)は、「大学生の時間的展望と不登校傾向との関連」について発表しました。
皿海さんは、大学生が入学後の環境不適応によって大学に出てきづらくなることに、どのような要因が関係しているのか検討したいそうです。時間的展望(ある時点における主観的な過去、現在および未来についての個人的な捉え方)と、こうした大学生の“不登校”傾向との関係に焦点をしぼり、たくさんの文献レビューに基づき説明をしてくれました。
4人目の発表者の半山智也さん(静岡県立伊東高等学校出身)は、「妖怪の社会心理学的意義と妖怪を用いた防犯プログラムの開発」というタイトルで発表しました。
妖怪はそれぞれ特徴が違います。例えば、鬼や天狗は畏怖の対象として近づきがたい雰囲気を持ち、時に人間を攻撃します。一方で、座敷童や枕返しは人間に接近し、人間を助けてくれることもあります。半山さんは、計量テキスト分析でそれぞれの特徴を整理しつつ、こうしたそれぞれの妖怪がもつ特徴を生かした子どもに親しみやすい防犯プログラムを作成中であることを説明してくれました。子どもに立ち寄らせたくない危険な場所には鬼を立たせる、道案内役は座敷童に・・・といった具合でしょうか。
最後の発表者は横田あさぎさん(鳥取県立境高等学校出身)でした。「大学生におけるインターネット上での匿名性と攻撃性の関連—仮想的有能感の調整効果に着目して—」というタイトルで発表しました。
インターネットにおける誹謗中傷の問題は、近年特に注目されるようになりました。横田さんは、こうした社会問題にも直結するインターネット上での攻撃行動に関係する要因について調べています。匿名性、仮想的有能感(実際の有能さは関係なく、他者の能力を批判的に評価・軽視することによって生じる有能さの感覚)に焦点をあてた研究が進行しており、その結果を報告してくれました。
それぞれの発表は中間報告ということもあり、荒削りなところが多かったですが、年明けの修士論文提出や口頭試問会に向けて、これからラストスパートをかけてくれることでしょう!発表会に参加した大学院1年生や学部生の後輩にも、良い刺激を与えてくれたと思います。
大学院2年生の皆さん、中間発表会、ご苦労さまでした!!
<最後は、研究科長の平伸二教授からの講評です。>
私たちが持って生まれた大事な能力のひとつに適応力(うつり変わる周囲の状況に対処できるよう新たな行動を学習する能力)があります。こうした学習のおかげで、私たちは人生をフレキシブルに構築し、あらゆる環境に適応できます。
ここまで紹介したように、大学院人間科学研究科(および心理学科)の学生たちは、コロナ禍における教育・研究環境に適応しながら学びや研究を止めず、成長を続けています!
私たち教員もこうした学生の意欲に応じ、コロナ禍における新しい教育方法や教育環境を創出しています。大学からも、コロナ禍でも実施できる心理学の実験や調査を行うためのオンラインプラットフォーム(Qualtrics)を契約していただくなど、大いにサポートしてもらっています。
こうした状況だからこそ得られることも多くあると思います。引き続き、教員・学生一丸となって学びや研究を継続し、同時に深化もさせていきたいと思います!
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ハイブリット形式の中間発表会。音声等のトラブルもなく非常にスムーズに執り行われたのは、準備に携わった教員や大学院生の努力あってこそだなと心から思います。状況にフレキシブルに適応する姿は、これから大学院に進む学生の目にもしっかり焼きついたことでしょう。心理学科、人間科学研究科ともに、これからのますますの進化(深化)にご期待ください!
学長から一言:大学院人間科学研究科の心理臨床学専攻の修論中間発表は実に充実した内容だったようですね。コロナ禍にめげることなく、今置かれた状況の中で何が最大限できるかを考え実行したように見えるところが素晴らしい。研究テーマも各人各様、機会があれば聞いて見たいような内容ばかり。課程修了時までに各研究がさらにブラッシュアップされるように、研鑽を続けて下さい。きっと世の中の役に立つものになりますよ。