【プレスリリース】アザラシとアシカ・セイウチは独立に海に適応した

イヌやネコが所属する食肉目という哺乳類の中には、鰭脚類(アザラシ、アシカ、セイウチの仲間)という海を拠点に生活するグループが存在します。本研究では、5つの味覚のうち旨味と甘味の感知をつかさどる3つの遺伝子(Tas1r1, Tas1r2, Tas1r3)について、タンパクコード領域全域のDNA塩基配列を決定することで、分析に用いた16種全ての鰭脚類の味覚遺伝子において機能喪失型の突然変異(フレームシフトおよびナンセンス突然変異)を検出しました。このことは、海への適応に伴い餌を咀嚼せず飲み込むようになったことで、進化的に(退化的に)味覚機能の喪失が起こったことを示唆します。さらに、それら機能喪失型突然変異は、アザラシ科に共通のものやアシカ科・セイウチ科に共通のものが見つかった一方で、全ての鰭脚類で共通するものは見つかりませんでした。したがって、アザラシとアシカ・セイウチの祖先は、異なる非海生哺乳類から独立に海に適応したのではないかと考えられます。また、機能喪失によりアミノ酸置換の伴う突然変異が高頻度で起こったことも突き止めました。このことは、これら遺伝子の機能的重要性が弱まっていることを意味します。なお、本成果は11月21日にJournal of Biogeography(online版)に掲載されました。

Wolsan M, Sato JJ (2019) Parallel loss of sweet and umami taste receptor function from phocids and otarioids suggests multiple colonizations of the marine realm by pinnipeds. Journal of Biogeography 

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jbi.13749 福山大学、ポーランド科学アカデミーとの共同研究

 


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