【生物工学科】福山バラの酵母を使ったパン種を全国展開!!

【生物工学科】福山バラの酵母を使ったパン種を全国展開!!

福山バラの酵母プロジェクトを進めている生命工学部生物工学科久冨泰資教授より、福山バラの酵母を使ったパン種(ホシノ薔薇酵母パン種)発売の報告が届きました。福山バラの酵母プロジェクトの発足からパン種として全国販売されるまでの道筋を改めて振り返っていただきましたので、学長室ブログメンバーの吉﨑が投稿します。

 

福山バラの酵母の発見と上質なパンの開発

以前に、このコーナーで紹介しました『「福山バラ酵母のパン」初の福山大学ブランドを販売開始!!』。あれから2年4ヶ月を経て、いよいよ福山のバラ酵母がパン種として全国展開される日を迎えることができました。

福山市はバラを市の花に選定しており、「100万本のばらのまち」のかけ声の下、市民のバラへの愛着も高い都市です。毎年5月にはバラをテーマとした「福山ばら祭」が開催され、様々なイベントに市内外から多くの方々が訪れます。

また、2024年には、世界バラ会議が福山市で開催されることが決まっており、世界中からバラの愛好家や育種家などが集います(世界バラ会議福山大会)。

 

福山ばら祭

さて、生命工学部生物工学科の分子生物学研究室(久冨泰資教授)では、2013年から地域活性化を目指した産学官連携のプロジェクト(福山バラの酵母プロジェクト)を開始しました。これは、福山大学と福山市との包括協定の目玉の一つでもあります。

 

本プロジェクトでは、福山市の園芸センターで栽培されたバラを採取し、そこに生息している野生の酵母を分離して、その遺伝学的特質や発酵力などをつぶさに解析していきました。

これまでに50品種のバラの花から1,300株を超す野生酵母を分離することに成功し、様々な試験を経て最終的に8株の野生酵母がパン作りに適していることを明らかにしました。

いろいろなイベントを通して、これらの酵母を使って製造したバラ酵母パンを一般の方々に提供してきました。香り、食感、味わいにおいて、これまでにない特徴のある上質なパンができあがり、モニターの方々にも大好評でした。

アンブレラでのバラ酵母パンの初販売

パン種の市販化

ここまで順調に開発を進めてきた製パン用バラの酵母ですが、私たちが実験室レベルで準備できる酵母の量には限界があり、必然的に製造できるパンの量も限られていました。もっと多くの方々に「福山バラの酵母」を使ったパンを提供したい、是非ともその味わい深い上質なパンを食していただきたい、福山から全国へ世界へバラ酵母パンを普及したいとの強い思いから、大量のパン作りには必須となるパン種の製造試験に着手することにしました。

この製造試験にあたっては、東京の(有)ホシノ天然酵母パン種にご協力を仰ぎました。ホシノ天然酵母パン種は、パン作りに有用な天然酵母を麹による日本古来の醸造法で育成し、乾燥粉末にする独特の製造技術を保持しており、このパン種を使って製造したパンは古くから多くのファンを引きつけています。福山にもこのパン種を使っているパン屋さんが数多くあります。

私たちがホシノ天然酵母パン種と共同して、バラ酵母を使ったパン種の開発を始めたのは2015年11月です。しかしながら、福山バラの酵母をパン種に仕上げるには幾多の試練が待っていました。失敗に失敗を重ねながらようやく明かりが見えてきたのは、酵母に冷蔵耐性(冷蔵保存しても酵母が生き残る性質)を付与することでした。これを期に、一気に「福山バラの酵母」のパン種化が進みました。

ミスターリンカーンの花

最終的にパン種に仕上げることができたのは、ミスターリンカーンという真紅のバラの品種から採取された野生の出芽酵母で、古来から発酵醸造に用いられてきたサッカロマイセス・セレビシエという酵母の仲間でした。食経験や安全性の面からも申し分ない酵母菌株です。

福山バラの酵母を使って、ホシノ天然酵母パン種で製造したパン種を「ホシノ薔薇酵母パン種」(商標登録済み)と名付けて、ようやく世に出すことができました。500グラムのパン種入りパック(冷蔵保存)で、販売価は2,200円+税です。福山市御船町の(有)ぬまくま夢工房が、店舗とネットで販売しています。

福山市のパン屋さんはもとより、全国のパン屋さんからも数多くの引き合いが来ています。この先、学校給食や福山大学の売店でもバラ酵母パンを食すことができるようになることを願っています。バラ酵母パンを通して、福山大学や福山市をまず第一に思い浮かべてもらえると本望です。

ホシノ薔薇酵母パン種(500グラム入りパック)

いろいろなバラ酵母パン

このバラ酵母を使ったパン種の開発・製造・販売にあたっては、福山市・ぬまくま夢工房・ホシノ天然酵母パン種の強力な連携があってのことです。なにより、分子生物学研究室に所属した卒研生の研究襷リレーの賜です。また、有形無形のたゆまぬ応援を続けていただいた多くの方々に心から感謝の意を申しあげます。

最後に、7月2日(火)に福山市今町のコミュニティハウスアンブレラで行われた記者発表の様子と東京都江東区有明の東京ビッグサイトでのお披露目会の様子をお伝えします。

福山アンブレラでの記者発表

2019国際食品工業店(東京ビッグサイト)

ホシノ薔薇酵母パン種の特別ブース(東京ビッグサイト)

 

「福山バラ酵母パン」を食していただいた方々からは、一様にいい香りで、外はさくさくなのに中はふんわりもっちりでとっても美味しいとの高い評価をいただいています。これらの様子は、多くの新聞や情報誌及びテレビやラジオで紹介されましたので、ご覧になられた方もいらっしゃるのではないかと思います。

福山市内のパン屋さんでも「福山バラ酵母パン」の販売が始まると思いますので、チャンスがあれば、是非とも召し上がってみてください。

 

学長から一言:「福山バラ酵母パン」も福山大学ブランディング事業「瀬戸内の里山・里海学」の一環です。。。同じく久冨教授のグループが福山のバラから採取した酵母を使ったワインを飲みながら、このパンを味わうと、最高でしょうねッ!!!

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