【大学教育センター】第11回教育改革シンポジウム開催!!

【大学教育センター】第11回教育改革シンポジウム開催!!

昨今、大学生の主体性をいかに育成するかが高等教育の重要な課題となっています。福山大学でも、学生が自ら考え行動する力を養うための教育改革が進められています。令和6年9月5日(木)に、福山大学1号館1階大講義室にて「大学生の主体性をどう育てるか?~高大接続の観点からアクティブ・ラーニングの本質を問う~」と題した、第11回教育改革シンポジウムが開催されました。その様子を、大学教育センターの前田が紹介します。

 

 

第11回教育改革シンポジウム:大学生の主体性をどう育てるか?

今回のシンポジウムでは、アクティブ・ラーニングに着目し、その本質を問いました。その答えを通じて、大学生の主体性を育むための教育のあり方を探ろうとしました。その際、初等・中等教育をめぐる教育改革の「トレンド」や中等教育における教育実践例などへ目を向けることにもなりました。大学生が主体的に学び、自らの未来を切り拓くための力を育むための議論が繰り広げられ、参加者にとって貴重な学びの機会となりました。

 

第一部)基調講演:大学生の主体性をどう育てるか?~高大接続の観点からアクティブ・ラーニングの本質を問う~

 

シンポジウムの第一部では、文部科学省での勤務に次いで、現在は広島県総務局付課長である寺田拓真氏による基調講演が行われました。寺田氏は、参加者が考えたくなるような課題を設定し、またペアワークという手法を用いながら、アクティブ・ラーニングの本質をめぐって参加者に大いに考えさせて下さいました。学習形態のみをもって、アクティブ・ラーニングであるか否かの議論をすること自体が不適当であり、「活動」がアクティブであるか否かではなく、「思考」がアクティブであるか否かが重要であるということに気づかされた思いがしました。その上で、初等・中等教育の段階で進められている「主体的・対話的で深い学び」の紹介があり、「思考がアクティブな学び」こそ「深い学び」ではないか、と参加者に問いかけられました。

また、そもそも「アクティブ・ラーニングとは、いったい何のためのものか?」とも問われ、その問いを通じて、児童生徒を「アクティブ・ラーナー」に育てることの大切さと、そのために教師(大人)自身が「アクティブ・ラーナー」になる必要性が強調されました。さらに、例えば「問いと答えの間が長い学習活動」である、複雑で深い学びのあり方を提示し、それを近年急速に進化を遂げる生成AIの得意な領域と比較しながら、思考することの大切さが説かれ、思考と主体性の関係への言及がなされました。

アクティブ・ラーニングという手段を駆使した今回の講演は、参加者に強い印象を残し、アクティブ・ラーニングの本質を掘り下げることで、育てたい学生の主体性が一体なにを指すのかが明確となり、そのための新たなアプローチへの興味・関心を喚起するものとなりました。

 

第二部)てい談・フロアとの対話:大学教員と講師が語る教育改革

 

シンポジウムの第二部では、講演者の寺田氏、大学教育センターの今井航教授と井上泰准教授によるてい談が行われました。

まず、井上准教授から「高大接続」の具体事例として、中等国語科教育の実際(『竹取物語』学習)と、それを踏まえた大学での学びの実際(「国語科教育法Ⅰ・Ⅱ」)が報告されました。多くの中等教育国語科においては、活動を行うことが主となり、古典作品と学習者が出会っていない可能性があること、一方で、教員が主体的に教材分析をして授業を行えば、学習者が作品の問いかけと出会い、その答えをめぐって自己との対話を行う可能性があることが説かれました。また、中等教育における古典との出会い損ないを念頭に置いて、大学の授業では出会い直しを図り、それを通して国語科教員としての主体性を育もうとしているとの説明でした。中等教育においてどう主体性を育むか、そして中等国語科教員を養成する立場から大学での学びをどう生んでいくかが問われ、とくに「思考がアクティブな学び」を生むための諸条件が示されたように思いました。

続いて、フロアとの対話では、教育の評価基準や教員の成長、アクティブ・ラーニングの本質が議論されました。そこでは、教員自身が教科を楽しむことで生徒の学びを促す関係性が大切であるとの指摘があり、さらには、アクティブ・ラーニングの本質は、「動機づけ」と学びの「転移」による深い学びにあるとも語られました。

 

まとめ:未来に向けた教育改革の一歩

 

「第11回教育改革シンポジウム」は、アクティブ・ラーニングの重要性を再認識する貴重な場となりました。基調講演やてい談・フロアとの対話を通じて、その本質を捉えようとする議論が展開され、今後の授業改善に向けた方向性を探り、参加者にとって多くの学びを得る機会となりました。

また、今井教授の指摘にあったように、大学教員自身が研究を楽しみ、自身の課題を追究していく姿勢が教育において重要であると思いました。私自身、担当する授業の改善に向けた具体的な方向性を見出すことができ、学びの多い充実した2時間を過ごすことができました。

【過去の記事】 第10回教育改革シンポジウム開催!!

 

 

学長から一言:10年前に始めた本学の教育改革シンポジウム、今年は「大学生の主体性をどう育てるか」がテーマに取り上げられました。基調講演をお引き受けいただき、本学でも重視してきたアクティブ・ラーニングとの関係からこの課題に切り込んで下さった講師の寺田拓真氏に改めて感謝申しあげたいと思います。また、それぞれの立場から寺田氏との鼎談やフロアとの遣り取りを通じて、議論をさらに深めて下さった大学教育センターの今井教授、井上准教授もお疲れ様でした。

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